2025年、米国で人々がジムやスタジオ、ヘルスクラブを訪れた回数は延べ約70億回に達した。これは、コロナ禍前のピークを上回る過去最高の数字だ。同年、フィットネスおよびウェルネス分野への世界的なベンチャー投資額は、「ベンチャー投資サイクルの底(ボトム)」となる50億ドル(約8110億円)強にまで落ち込んだ。
この10年で最も重要な社会インフラの変化が、大半のベンチャー投資家がすでに見限ったカテゴリーで起きている。
これらの数字が示しているのは、一時的なフィットネスブームではなく、人々の行動の移行だ。
米ヘルス&フィットネス協会(HFA、旧IHRSA)によると、2025年の米国のジム会員数は前年比5.2%増の8100万人に達した。なかでも18〜24歳のZ世代の加入率は35.5%と、すべての年齢層の中で最も高かった。また、入会したものの一度も利用していない会員の割合は、過去最低の4.6%に低下した。人々はジムに料金を支払い、実際に足を運んでいる。これは、「幽霊会員」を収益化することに依存した数十年間のビジネスモデルの崩壊を意味している。
その背景には、SNSの普及とクラブ文化の衰退がある。1億8000万人超のユーザーデータをもとにしたフィットネスアプリ・SNS「Strava」のスポーツ年次報告書「2025 Year in Sport」によれば、同プラットフォーム上の新規クラブ数はほぼ4倍の100万に達し、ランニングクラブは前年比3.5倍、ハイキングクラブは5.8倍に成長した。Z世代の回答者の64%が、デートよりも「フィットネス用のウェアやギア」にお金を使いたいと答えた。
ブルームバーグは5月、「ジムがZ世代の社交やデートの場としてバーに取って代わりつつある」と報じ、「ロンドンのThird Space(サードスペース、高級ヘルスクラブチェーン)は金曜の夜、フィットネス施設というよりも会員制クラブのように機能している」と伝えた。その根底にある需要要因は測定可能だ。CNBCの報道が引用した米医療サービス大手のCignaのデータによれば、Z世代の67%が孤独を感じていると回答している。
社会学者レイ・オルデンバーグは、家庭と職場以外でコミュニティが形成される場を定義した。一世紀にわたり、バー、カフェ、教会がその役割を担ってきたが、業界データは今、ジムを、人々が職場、学校、家庭の外でコミュニティを見つけに行く「サードプレイス」と位置づけている。ジムのスクワットラックが、かつてのバーのカウンター席に代わる社交の場となったのだ。



