資金の本当の行き先
ベンチャーキャピタル(VC)はフィットネスを無視したわけではない。計測レイヤーには資金を投じたが、人々が集まる現実の「場(ジムなどの実店舗)」を素通りしたのである。
指輪型IoTヘルスケアデバイスを開発・販売するフィンランド発のOuraは2025年10月、評価額110億ドル(約1兆7800億円)で9億ドル(約1460億円)超を調達したことを発表した。ヘルステックの米Whoopは2026年3月、VCのCollaborative Fundやカタール投資庁(QIA)、アブダビの政府系ファンドであるMubadala Investment Companyなどを引受先とするシリーズGラウンドで、評価額101億ドル(約1兆6400億円)で5億7500万ドル(約932億円)を調達した。StravaはSequoia Capitalが主導するラウンドを経て、評価額が22億ドル(約3570億円)に達したと報じられている。この3社はいずれもセンサーやソフトウェアを販売しているが、見知らぬ者同士が友人になる「場」を運営している企業は1社もない。
一方、物理的なレイヤーは、プライベートエクイティ、フランチャイズ、公開市場の資金によって複利的に拡大している。
ブルックリンを拠点とするソーシャル・ウェルネス・クラブのBathhouseはCNBCに対し、年末までにランレート売上高が約1億2000万ドル(約195億円)に達する見込みだと述べた。同じくCNBCによると、フィットネス企業のLife Timeの株価は、同社がプレミアムウェルネスへ経営資源を再配分した2023年10月以降に2倍超へ上昇しており、スキンケアとソーシャルスタジオのフランチャイズであるGlo30は、開発中の店舗数を2年間で67.5%増やした。そして2026年3月のTechCrunchの報道によると、フィットネス事業者向けSaaSのMindbodyや消費者向け予約プラットフォームのClassPassを傘下に持つPlaylistは、ドイツ発のAIスマートジム機器・フィットネスSaaS大手EGYMとの経営統合を発表した。この動きは、業界が成熟期に差し掛かったことを象徴している。


