中国軍は6日、模擬弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を原子力潜水艦から発射した。ミサイルは長距離を飛行した後、南太平洋の公海上の海域に着弾した。毛寧外務省報道官は6日、実験は中国軍の年次訓練の一環だとし、「特定の国や目標を対象としたものではない」と説明した。中国による太平洋方面への弾道ミサイル発射としては、2024年9月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射訓練を44年ぶりに実施して以来、大きな注目を集める動きとなった。
着弾海域は南太平洋とされ、ナウルやツバルなど太平洋島嶼国に近い海域だった可能性が指摘されている。1986年のラロトンガ条約によって設定された南太平洋非核地帯との関係にも懸念が出た。模擬弾頭だったが、「中国は条約批准を約束しているのに、核の脅威をこの地域に与えた」として、オーストラリアや太平洋島嶼国などから反発の声が上がった。6日は豪州とフィジーが相互防衛条約に署名した日でもあり、一部の専門家からは「南太平洋などを威嚇する狙いがあったのではないか」という見方も出ている。
しかし、中国事情に詳しい東京大学大学院の李昊(りこう)准教授は「中国は太平洋島嶼国のことなど、気にかけていないかもしれない」と語る。李氏は「政治的シグナルが全くないとは思わないが、中国の念頭にあるのは米国だろう。あとはせいぜい盧溝橋事件の7月7日を意識したかどうかというところだろう。逆に言えば、中国には自分の行動が相手に脅威を与えるという認識が足りない」と指摘する。中国を過度に買いかぶり、行動を深読みしすぎない方がよいという。
米陸軍戦略大学のゼネル・ガルシア准教授も「必要なのは戦略的な共感だ。中国が自国の政策についてどう考えているのかを理解する能力を持つ必要がある」と語る。そのうえで、「中国の行動の理由を理解できれば、より効果的な政策を設計できるからだ」と話す。
中国は最近も軍幹部の粛清が行われるなど、習近平国家主席の独裁ぶりが際立っている。李氏は「中国の官僚組織は元々、縦割り主義だから、統一的な戦略を生み出しにくい環境にある。しかも、権力集中のために、何でも習氏の同意なしに物事が進まなくなっている。習氏が多忙で時間が取れず、部下たちが習氏に直接報告できる機会すらかなり限られているという。そのうえ、部下たちは粛清が怖くて、習氏になかなか本当のことを伝えられない」と話す。中国にも優秀な戦略家がいたとしても、肝心の指導者にその声が届いていないというわけだ。



