不透明感が強い中国だが、唯一わかっているのは、「ぶれない姿勢」だ。李氏は「習氏はピュアで使命感が強い」と指摘する。習氏は「中華民族の偉大な復興」を掲げている。中国軍も中国外務省もひたすら、習氏が示したこの使命を達成するために動き回っている。
その習近平氏とともに「新しい国際秩序」「多極化した世界」を唱え続けているのが、ロシアのプーチン大統領だ。米カーネギー・ロシア・ユーラシアセンターのタチアナ・スタノヴァヤ上級フェローは6月、論文「プーチンの世界:ウクライナ問題に関する合意は見えない」を公開した。論文は、プーチン氏がウクライナ戦争の終わりについて、ウクライナによるドンバス地方の事実上の完全な割譲を含む条件を譲らない姿勢だと指摘している。
論文は「問題は、プーチン氏が限られた情報しか持っていないとか、治安機関が彼を操作しようとしていることではない。ロシアの意思決定の過程が、世界の仕組みについて揺るぎないビジョンを持つ一人の人物(プーチン氏)によって成り立っていることだ」とした。プーチン氏も使命感に突き動かされ、その使命に反する考えを示す人や、否定する情報を排除するのだという。
一方、習近平氏とプーチン氏との良好な関係を望み、「独裁者にあこがれている」と批判されるトランプ氏はどうだろうか。トランプ氏は7月7、8両日、トルコ・アンカラで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の際、デンマーク自治領グリーンランドの領有に改めて意欲を示し、イラン攻撃で軍事協力に慎重だったスペインを「NATOのなかのひどいパートナー」とこき下ろした。一方で、サミット後には同盟国間の結束を強調する発言もしており、強硬発言と融和的な発言が入り交じった。
トランプ氏は第1次政権後半で、強硬な対中政策を採ったが、今年5月の訪中では「建設的で安定した戦略的関係」を重視する姿勢を示した。その後、シンガポールで行われたアジア安全保障会議で、ヘグセス国防長官は対中批判を抑制気味にした。さらに、米インド太平洋軍司令部の名称を太平洋軍司令部に戻す措置についても、対中包囲を前面に出さない姿勢を示すメッセージだとの見方が一部で出ている。
トランプ氏にも強烈な自己実現への欲求や名誉へのこだわりはある。ただ、それは世界秩序への挑戦を長期的な使命として掲げる習近平氏やプーチン氏の姿勢とは、かなり性格が異なるようだ。


