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2026.07.23 14:15

「軽く深い」の王道 映画『FUJIKO』が教えてくれた娯楽の強さ

『FUJIKO』全国公開中 Atemo (c) 2026 FUJIKO Film Partners

『FUJIKO』全国公開中 Atemo (c) 2026 FUJIKO Film Partners

先日、イギリス留学時代に親しくしていた友人と約10年ぶりに会いました。ロンドンを拠点にする映画監督の木村太一さん(以降、太一さん)。彼の新作を見て久しぶりに連絡すると、ちょうど映画のプロモーションで来日していた彼は即返事をくれました。

映画『FUJIKO』は、太一さんのお母様の人生を元にした作品で、彼の長編2作目になります。舞台は1970~80年代の静岡。急速な変化に揺れる時代にシングルマザーとなった主人公・富士子が、固定観念や社会の規範に抗いながら、自分らしく生きる姿を描いています。今年4月末、イタリア・ウディネで開催された第28回ウディネ・ファーイースト映画祭で最高賞を含む2冠を達成し、注目を集めました。10年前から「映画で世界を取る」と宣言していた太一さん。有言実行を心から嬉しく思いました。

映画監督の木村太一さん
映画監督の木村太一さん

彼が映画監督を志したのは小学生の頃。12歳で単身渡英し、ロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズやロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションで映画制作を学びます。卒業後はイギリスの音楽業界でライブ映像作家としてキャリアをスタート。私が出会った頃は、アーティストに同行してドキュメンタリー映像を撮り、深夜まで編集するような日々を送っていました。

「ドキュメンタリーを撮ったからこそ、かっこいい絵だけでなく、人の人格やリアリティを映すことに注力するようになった」と彼は振り返ります。

コロナ禍を機に日本で本格的に活動を始め、国内外アーティストのMVや大手ファッションブランドの映像を数多く手がけ、映像作家としての評価が高まる一方、映画監督としての認知は広がらず、映画会社に持ち込んでも「実績がない」と断られ続けました。「だったら自分たちで撮ってやる」と、自身のチームで完成させたのが初長編作『AFTERGLOWS』。幻想的なモノクローム映像と、感度の高い音楽表現が高く評価されました。

「前作は『どうだ、かっこいいだろう』という気持ちでやり尽くした作品。後輩たちへの嫉妬心や、断られ続けた怒りがあった。でも完成してみると、『こういうものが作りたかったのだろうか』と思った」

嫉妬や怒りを出し切ったからこそ、『ジュラシックパーク』や『ロッキー』に憧れて監督を志した自分を思い出したといいます。本当は怒りをポジティブに、爽快に描きたかった——それから4年かけて完成したのが『FUJIKO』です。

(c) 2026 FUJIKO Film Partners
(c) 2026 FUJIKO Film Partners
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文=前澤知美(前半)、安西洋之(後半)

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