人は50歳くらいになると、かなりの確率で白髪が目立つようになる。ただし、白髪になる理由は、一般的に言われているものとは少し違うかもしれない。
「50歳になると、50%の人の髪の半分が白髪になる」とよく言われる。しかし、2012年に『British Journal of Dermatology』で発表された研究で、この「白髪の50歳ルール」について世界規模で調査を実施して検証したところ、50歳で頭の半分が白髪になっている人の割合は6%から23%にすぎないことが明らかになった。
年齢を重ねるにつれて白髪になるのは、基本的には世界共通の現象で、食生活や気候、生活習慣を問わず、どの集団でも見受けられる。とはいえ、白髪になることには、生存や繁殖に何のメリットもない。自然選択は通常、何の役目も果たさない特性を容赦なく淘汰するが、白髪だけは淘汰の対象にならなかった。その理由を解明することは、老化の生物学における最も基本的な部分に迫ることになる。
髪の毛が白くなる仕組み
髪の色を決めるのは、毛包(皮膚の内部で毛を産生し、毛根を包み込んで支える管状の組織)の中にある、色を作り出す色素細胞「メラノサイト」だ。メラノサイトは、生えてくる髪の毛1本1本にメラニン(色素)を受け渡している。
加齢で髪が白くなる仕組みについて、生物学者が有力視する説で焦点となっているのが「色素幹細胞(melanocyte stem cells)」だ。これは、色素細胞の元になる細胞で、毛髪の成長サイクルごとに、色素の生成を担う細胞を補充している。
2005年に『サイエンス』誌で発表された研究は、この仕組みを明確にした。つまり、色素幹細胞が自らの「ニッチ」の中で維持されなくなると白髪が生えることが示された。研究者はそれまで、白髪になるのはただ単に、色素細胞が徐々に力尽きて消失していくからだと考えていた。
色素幹細胞が機能しなくなる理由については、今もなお解明が進められている。しかし、十分な裏付けが取れている一つの仕組みによると、酸化ストレスが関係している。
通常の代謝が行われると、反応性の副産物が生じる。その副産物には少量の過酸化水素が含まれていて、毛包がその過酸化水素を中和するが、老化とともにその力が徐々に失われていく。その結果、過酸化水素が蓄積して、既存の色素を内側から漂白し、メラニンを生成し続ける上で毛髪が必要とする酵素がダメージを受ける可能性がある。
また、慢性的なDNA損傷と、体の他の組織の老化にも関係している通常の細胞老化が複合的に作用している、と考えられている。ただし、白髪が生え始める年齢は家族で似通う傾向があるので、遺伝がかなり影響していることは明らかだ。



