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サイエンス

2026.07.14 16:00

白髪は「生存に無意味」でも淘汰されない理由

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白髪が生えるのは人間だけではない

同じ現象は、人間以外にも広く現れる。ただし、野生動物は白髪が生えるほど長生きすることはあまりない。捕食動物や病気、厳しい気候によって、色素を作る幹細胞が尽きる前に死んでしまうからだ。しかし、そうした外からの圧力を取り除けば、白髪を作り出す生物学的な仕組みはすぐさま姿を現す。

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最もわかりやすいのは、高齢の犬だ。多くの犬種は、年を取るとマズル(口吻)や眉が白っぽくなり、「シュガーフェイス」と呼ばれたりする。これはメラノサイトの働きが鈍くなった証拠で、人間の頭髪の生え際が白くなるのと同じ現象だ。高齢の飼い猫も、顔の周りが白っぽくなることがよくある。人間の白髪化の縮図とも言える「幹細胞の枯渇」が起こるのは、ペットが捕食者から守られ、獣医師のケアも受けられるからだ。

高齢の象については、この現象にちょっとしたバリエーションが加わっている。アジアゾウは年を取ると、鼻や耳を中心に、色の薄いそばかすのような斑点ができる。なぜなら、毛ではなく、皮膚の一部のメラノサイトが、年齢とともに色素を生成しなくなるからだ。その仕組みは、人間に白髪が生える仕組みと根本的には同じで、毛包ではなく皮膚にそれが現れただけにすぎない。

この現象を興味深い形で複雑にしているのが、年齢と共に変化する灰色の毛を持つ芦毛の馬だ。毛が灰色なのは、年齢のせいではない。芦毛の性質を持つ仔馬はたいてい、生まれた時は毛色が濃く、成長とともに数年かけて(時には10年以上かけて)少しずつ白っぽくなっていく。

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このような現象が起きるのは、「STX17遺伝子」が原因だ。これは、優性遺伝する突然変異の遺伝子で、2008年に『Nature Genetics』で発表された研究で特定された。とはいえこの場合は、メラノサイトが「引退」するのではなく働きすぎて(分裂・増殖が過剰すぎて)、色素細胞が早いうちに枯渇してしまう。その結果、馬が何歳であろうと、ほぼ真っ白な被毛が生えてくる。

ここで改めて、大事なことに気づかされる。「色が失われる」と一言で言っても、その裏側には、まったく異なるいくつかの生物学的な仕組みが存在しているのだ。まず、芦毛の馬のように、被毛の色を決める遺伝子が独自のプログラムを実行しているケースがある。また、人間のように、通常の老化で幹細胞が枯渇して色が失われるケースもある。さらに、高齢の鳥の羽色が薄くなるのは、どちらかと言うと、羽根が摩耗したり、紫外線によって退色したり、食生活のせいで色素が不足したりするのが原因であって、本当の意味で細胞が老化するせいではない。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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