「発酵」ではなく「Cultured」
もっとも、業務用と家庭用とでは売り方がまるで違う。商談に時間をかけ、試食まで提案できる業務用と異なり、店頭では棚に並んだ一瞬で価値が伝わらなければならない。ましてや米国の消費者の多くは、塩こうじをどう使うのかすら知らない。
「いかに短いフレーズで商品の価値を表現するか。それが家庭用市場の最大のポイントだと考えました」
社内だけで答えを出すのは難しいと判断した花岡は、2024年にCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に就任したクリエイティブディレクターの塩内浩二に相談。米アップルでのマーケティング経験を持つ人材もチームに迎えるなど、外部の知見を取り込んで生まれたのが「Cultured Umami Essence」というコピーだった。
英語で発酵を表す一般的な単語は“fermentation”だが、コピーには“Cultured”を採用した。Culturedは菌を「培養する(culture)」ことに由来し、英語圏ではヨーグルトやサワークリームなど発酵乳製品を指す言葉として日常的に使われている。米国の消費者にとって、発酵食品であることが一目で伝わるのだ。そして、この単語にはもうひとつの顔がある。
「“Cultured”という響きには、発酵という意味だけでなく、日本の文化的な背景や洗練された価値を重ねることができます」
一方の “Umami”は、すでに英語としてシェフや食品業界に定着している。培養・文化のCulturedと、定着済みのUmami。この組み合わせで「日本の発酵文化から生まれたうま味調味料」という商品の核心を、店頭の一瞬で伝える狙いだ。
「短いフレーズで価値を定義できることが、塩こうじの理解を広げる力になると考えています」
商品も消費者向けにつくり直した。3600社以上が出展し約9万人が来場した今回の展示会で披露した海外向けラインアップは、欧米のトレンドを意識したミニマルなデザインに刷新したうえで、従来の業務用500mlに、家庭で初めてでも試しやすい210mlの小容量タイプを追加。210mlには通常版に加えて有機認証版の2種類を用意した。世界最大級の有機食品市場を抱える米国の店頭では、この有機認証版を提案の中心に据える。


