この拠点からの供給で、海外の業務用採用は和食の枠を超えて広がっている。北欧の大手製パンメーカーがパンの製造に、ロンドンの高級スーパーが惣菜に採用。米国では、植物由来のミルクとして市場が拡大するオーツミルクで、原料のオーツ麦特有の臭みを抑える用途に使われている。いずれも、酵素の働きでうま味を引き出し臭みを抑えるという機能が、国や料理のジャンルを問わず通用することの証左だ。米国では約2年前、テキサス州ヒューストンに駐在員事務所を設け、こうした業務用の営業を進めてきた。
そして直近、タイ工場が積み上げてきた認証の、いわば最後のピースが揃った。有機認証の取得だ。これを機に同社は、あえてハードルの高い米国の一般消費者向け市場に踏み込むことを決めた。
「液体塩こうじは、世界的な『クリーンラベル』のトレンドに合致する商品です。米国のパートナーからは『塩こうじはスーパークリーンだ』と評価されてきました。そこに有機認証が加わり、米国市場に打って出る準備が整ったと判断しました」
クリーンラベルとは、添加物や人工的な原材料に頼らず、誰もが知っている素材だけで食品をつくろうという世界的な潮流だ。欧米の消費者の間ではパッケージ裏の原材料表示を確かめて商品を選ぶ習慣が根づいており、表示が短くシンプルであるほど自然で健康的だと評価される。工業的な加工を重ねた「超加工食品」を避ける動きが強まるなか、米こうじと食塩などわずかな原材料でつくられ、しかも酵素がうま味を引き出す液体塩こうじは、この価値観にぴたりと収まる。
土壌もできつつある。同社が2022年にニューヨークとロサンゼルスのシェフ計100人を対象に行った調査では、「塩こうじ」の認知度は72%にのぼった。
「米国の料理大学CIA(カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ)でも日本食への注目が高まり、麹を扱う書籍も人気を集めています。シェフの間での麹の認知は、確実に広がっています」
家庭用への参入には、業務用への還流という狙いもある。スーパーの棚やメディアで塩こうじの露出が増えれば、それを目にするのは一般消費者だけではない。
「家庭用に取り組めば麹や塩こうじの認知度が上がります。シェフや食品メーカーの開発者、マーケターもそれを見ていますから、業務用でもさらなる採用につながる。両方を手がけることが相乗効果を生むと確信しています」


