テクノロジー実装の最前線、中国・深圳。その「現在地」を肌で知るため、私は香港から境界を越えた。
Huawei、Tencent、BYD、DJIなど、世界規模で事業を展開するテック企業を生み出した都市として知られる深圳。急成長を遂げた後、競争環境の変化や規制強化などを経て、今、新たな成熟期に入っている。
現在の深圳を特徴づけるのは、巨大テック企業が持つ技術力と、それを社会へ高速で実装する力だ。AI、ロボット、自動運転、EV。ここではデジタル技術が、人々の暮らしや体験価値そのものを変えようとしている。
この街が目指しているのは、テクノロジーによって、人間の生活をどのように豊かに再設計できるかという挑戦だ。私が深圳を訪れた理由もそこにある。テクノロジーが人々の暮らしや価値観をどのように変え、次世代の豊かさをどのように定義しようとしているのか。それを五感で確かめたかったのだ。
テクノロジーは私たちを本当に豊かにするのか?
街は想像以上のスピードで未来を日常へ取り込んでいた。7月から市内全域で始まった無人タクシーの運用。試乗すると、車間距離の保持も車線変更も驚くほどスムーズで、安全性にも不安は感じない。
ロボットの実装拠点「ロボット6S店」では、ロボットがピアノを奏で、マッサージを施す。目指すのは人間と共存し、家事や介護をこなすレベルの開発だという。

驚いたのは、あるイベント会場の光景だ。数台のロボットが、アイドルのごとくキレのあるダンスを披露する背後で、子供たちがコーラスを歌う。その舞台を、家族連れが楽しそうに鑑賞している。ロボットとの共存が日常に溶け込んでいるのだ。同時に人間が、ロボットのパフォーマンスをお膳立てしているようにも映り、奇妙な皮肉さを感じずにはいられなかった。

空を見上げれば、アプリで注文したドリンクがドローンで指定の受け取りボックスへと正確に投下される。その横にはデリバリー袋の回収箱があり、スマートに再生利用される。人気店での行列を避けられるのはありがたいが、ドローンが空を埋め尽くす未来はどうなのだろうか。
翻って地上では、時間を守ろうと躍起になるデリバリーバイクが歩道を猛スピードで突き進み、肝を冷やす。
深圳では、未来の技術が人々の日常の中で試され、改善され続けているのだ。テクノロジーの進化に圧倒されながら、私の頭には一つの問いがよぎった。 「果たして人間にとっての真の快適さや豊かさに向かっているのだろうか」と。
その問いに対する一つの答えを示していたのが、中国の最新EVだった。それは深圳が培ってきたハードウェア、ソフトウェア、デザイン、そして人間の感性を結びつけた「新しい生活体験」の象徴ともいえる。



