テクノロジー

2026.08.04 14:15

女心をくすぐるEV 「デジタルラグジュアリー」という価値基準への転換

世界のラグジュアリーの新基準を創るアジアの隣国

なぜ彼らはこれほど短期間で、人の心を奪う車を生み出せるのか。視察を重ねるうちに、彼らの「価値創造」の本質が見えてきた。

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例えば、韓国のヒョンデが展開する高級レーベル「Genesis(ジェネシス)」もスタイリッシュな車だ。こちらもアウディやベントレー、BMWなどから世界的デザ イナーや開発責任者を次々と引き抜いている。

彼らの大躍進の背景にあるのは、欧州トップメゾンや家具、建築に対する徹底的な研究だ。 始まりは模倣だったかもしれない。しかし彼らは、その研究成果を自国の強みであるハイテク技術と掛け合わせ、新しい「デジタルラグジュアリー」へと昇華させている。そのエネルギーとスピード感には圧倒される。

自動車の本場・ドイツでさえ「今やドイツが中国から製造技術を学ぶ時代」と公共放送ZDFが報じている。中国の自動車購入者の平均年齢は、ドイツより20歳ほど若い。彼らが求めるインフォテインメント技術(情報とエンタテイメントの融合)は、中国に圧倒的優位性があり、もはやドイツの巨大自動車メーカーでさえ、中国の新興企業とタッグを組まなければ顧客満足度の高い製品が造れないというのだ。

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スポーツセダンのエントリーモデル(約630万円〜)
Genesis スポーツセダンのエントリーモデル(約630万円〜)

日本が磨くべきものは何か?

世界の高付加価値化の潮流を日本に発信し、日本の競争力を高めたい。その想いで世界を歩く度に、「日本はこのままで大丈夫だろうか」と焦燥感が募る。

日本車への信頼性は、今もなお揺るぎない。今回目にしたEVを自分が実際に購入するかというと、長期的な品質や安全性に不安を覚えるのも事実だ。しかし、車に乗り込んだ瞬間に五感が歓び、旅の始まりに胸が高鳴る──そんな「情緒的価値」を、今の日本車はどれだけ提供できているだろうか。

世界では「デジタルラグジュアリー」という、新たな価値基準への転換が始まっている。それは高価な素材や伝統だけではなく、最先端技術によって人の五感や感情を満たす、新しい豊かさの形だ。その地殻変動の中で、日本は取り残されてはいないだろうか。

香港の夜景を眺めると、かつて街を彩っていた日本企業のネオンは影を潜め、中国企業の看板が存在感を放っていた。その中にPanasonicやAEONの灯りを見つけたとき、私は思わず「ありがとう」と呟いた。世界で日本企業が輝く姿は、私たちに勇気をくれる。

だからこそ、日本の基幹産業である自動車産業には、これからも世界の各地で輝き続けてほしい。 そのために今目を向けるべきは、乗る人の感性を揺さぶる「デザイン性」と、心を動かす「情緒的価値」ではないかと思う。

文・写真=山田理絵

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