文字を書くということは、いわば自分の内面を知り、外面へ表出させて他者へ伝えることである。それは人間が悠久の時を費やして生み出した高度なコミュニケーションであり、知的活動の到達点だ。モンブランの筆記具は、そんな人間の知的活動を100年以上にわたりサポートしてきたのである。それは淀みなく文字が書けるモンブランの筆記具が、自身の内面と繋がるのに絶好の逸品である証しなのだ。
では、そんなトマセッタ自身は、手で書くことをどう捉えているのだろうか。
「私自身もペンを使い、手で書くことを好むタイプです。そもそもクリエイションの源はすべて日常にあると、私は思っています。出会う人々との会話やアート、建築、ファッション、デザイン、文学など、あらゆる日常の事柄がインスピレーションを与えてくれるのです。映画を観ているとき、あるいは旅行をしているときに、アイデアが思い浮かぶかもしれない。だから私はいつもペンと手帳を持ち歩き、アイデアを書き留めるようにしています。スマートフォンでもそれはできますが、私の経験上、そうすると味気ないものになってしまうのです」
日常の風景から直感的に浮かび上がるアイデアを、ペンで手帳に書き留める。それはごくシンプルでありながら、非常にエモーショナルな行為である。そしてデジタルを介することなく、ペンというアナログなデバイスへ直接伝わるからこそ、瑞々しいアイデアとして記録されるに違いない。
このようにトマセッタのクリエイションが効率性や利便性とは一線を画すエモーショナルなものであることは、次のような言葉にも表れているのである。
「現在はなにかとスピードが求められますが、最近私は移動にあえて電車を利用するようにしています。他にもっと早く着ける手段もありますが、電車に乗るとまず自分の時間ができ、そこでデザインを考えたり、思索に集中することができるのです。
また電車内では様々な人々の日常の生活を垣間見ることができます。人々がどんな服を着て、どんなバッグを持ち、どんな本を読んでいるのか。それらは私に何よりもインスピレーションを与えてくれるのです」


