経営・戦略

2026.07.21 16:45

ラクスル田部正樹、CMOからCROへ 肩書き変更の裏にある「誤解」

田部正樹|ラクスル上級執行役員グループCRO 兼 ノバセル代表取締役社長

「正直なところ、マーケティング活動によって認知や好感度を上げても、結果として収益につながらなかったという企業事例はいくらでもあります。だからこそ、経営者が“マーケティングでは会社の収益や事業成長に紐づくことしかやらない”と決めてしまうことが重要。そうすればマーケターは、同じ1億円の予算をもらったとしても、あらゆる選択肢を検討できますよね。プロモーションしたほうがいいのか、営業を雇ったほうがいいのか、はたまた新しい商品を開発したほうがいいのかなど、収益を上げられるのであれば過程はなんでもいい。本来のマーケティングは、会社経営とほぼ同義なのです」

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 では田部が行ってきたマーケティング活動の実情とはどのようなものなのか。一例が18年のマザーズ上場後の仕掛けだ。当時、ラクスルは印刷や物流サービスをメイン事業として展開し、テレビCMなどマス広告にも力を入れていた。ただ、上場が具体的になったフェーズで、田部はさらなる成長を見据えて製品(Product)に注目。20年にマーケティング部内の新規事業として運用型テレビCMサービス「ノバセル」を立ち上げた。これは、ラクスルで約60億円を投資して売り上げを7億円から300億円規模まで伸ばしたマーケティングノウハウをベースにした事業だ。これがラクスル全体の業績を牽引する事業に成長し、22年に分社化。田部がCEOとして事業を主導し、現在約100億円にまで売り上げを伸ばしている。

「手段を選ばずに、何が会社の成長に最も寄与するかを考えた結果、プロモーションで認知を上げるのではなく、事業そのものをつくるという方法を取りました。CEOに限らず会社全体を見て動ける人が複数人いることは、経営の観点からも非常に重要。そのなかでマーケターは、顧客が求めていることを社内でいちばん理解し、それに応えていけることに価値があるのかなと思っています」

KEYWORD_01|CRO
Chief Revenue Officerの略。それまで縦割りになっていた営業、マーケティング、カスタマーサクセスなどの売り上げを直接創出する部門を、まとめて統括する役割を担う。2000年代の米シリコンバレーで、特にSaaS企業の台頭とともに誕生し、米国を中心に一般化した。

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文=三ツ井香菜 写真=若原瑞昌

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