米Yahoo!ファイナンスによると、スターバックスはソフトウェアに年間およそ4億ドル(約647億円)を支出している。ブルームバーグは、同社が在庫を追跡管理するマイクロソフトのシステムと、保守業務を管理するIBMのプラットフォームについて、AIを活用した自社製の代替システムを開発中だと報じた。新たなAIツールの一部は、テストの結果次第で来年末までに導入される可能性があるという。
市場は即座に反応した。
IBMの株価は取引開始前の時間外取引で約3%下落。ServiceNowは3.5%安、セールスフォースは4%安となった(米Yahoo!ファイナンスによる)。この日の朝、これらの企業が実際に契約を失ったわけではない。彼らが失ったのは、20年にわたってエンタープライズソフトウェア(企業向け業務ソフトウェア)企業の株価評価を支えてきた「物語」の一角である。
すなわち、「ソフトの自社開発はあまりに難しいため、大企業は必ず買い続ける」という物語だ。
一方で、株価がほとんど動かなかった企業を見てほしい。今回の報道で実際に名指しされた2社のうちの1社、マイクロソフトだ。というのも、マイクロソフトはスターバックスが置き換えようとしている在庫管理アプリケーションを販売すると同時に、その代替システムの開発基盤となるクラウドAIインフラ「Azure」も販売しているからだ。スターバックスの店舗スタッフ(バリスタ)支援ツール「Green Dot Assist」は、すでにAzure OpenAI上で稼働している。
これに対してIBM、ServiceNow、セールスフォースが事業を展開しているのはアプリケーション層、つまりコーヒーチェーンでさえソフトウェアを自社で開発・刷新できるとスターバックスが証明してみせた、まさにそのレイヤーである。
そもそもServiceNowとセールスフォースは、今回の報道で名前すら挙がっていない。それでも両社の株価は売られた。つまり市場は、この流れの影響をどれだけ受けやすいかを基準に売ったのであり、アプリケーション専業のベンダーこそが最もその影響を受けやすいのだ。
その物語が、いま崩れ始めている。



