スターバックスの一手が引き起こす影響
4つの波及効果が予想される。ビジネスリーダーはこれらの動きに注意を払うべきだ。
第1に、ベンダーは最も複製されにくい領域で反撃に出るだろう。すなわち、システム連携の深さ、ガバナンス、セキュリティ、そして何十年もかけて蓄積してきたドメイン知識(業務領域固有の知見)だ。マイクロソフト、IBM、セールスフォースが、アプリケーションの売り手からインフラと信頼の提供者へと立ち位置を変えていく様子に注目したい。
第2に、より多くの企業が、最もコストが高く、最も不評なシステムを対象に「スターバックスと同じ一手」を打つようになる。社内ツールが商用ソフトウェアを一夜にして置き換える必要はない。ベンダー製品との適合度が最も低く、ライセンス費用が最も高い部分に狙いを絞った代替から始まるのだ。
第3に、この移行を支える新たなサービス市場が生まれる。誰かが業務プロセスを整理し、データを統合し、企業が今後自ら所有するシステムを設計しなければならないからだ。
勝者となるのは、技術そのものは容易な部分だと理解している実務家である。企業が実際にどのように動くかを再設計することこそ難しく、それは極めて人間的な仕事だ。判断力、状況の理解、組織変革の管理は、コーディング支援AIからは生まれない。
第4にさらに先の将来には、AIへ指示文を入力すること自体が次第に姿を消す。統合されたシステムの上でAIエージェントが動き、十分な履歴データと個人データを利用できるようになれば、指示を待たなくなる。反復作業を自動的に完了して実行し、数百万人の類似利用者のデータと照らし合わせて、将来のニーズを予測するようになる。
この未来は、われわれが意図して設計するかどうかにかかわらず到来する。唯一の問題は、AIエージェントが利用するデータを誰が所有するかである。自らのシステムを管理する企業や個人は、自らの条件で先回りできる。それ以外の者は、他社のプラットフォームに行動を予測される側になる。
スターバックスの本社があるシアトル発のこのニュースの教訓は、「AIが安くソフトウェアを書いてくれる」ということではない。
地道なプロセス改革を先にやり抜く覚悟のある企業にとって、自社のオペレーションを自ら所有することが再び可能になった──ということだ。
スターバックスは、それが4億ドルの支出の上でどのような形を取るのかを、私たちに見せてくれたのだ。


