スターバックスの報道で誰もが見落としている点
現在の報道には、抜け落ちている視点がある。
スターバックスは、マイクロソフトとIBMから完全に離れるわけではない。同社は今もなお、マイクロソフトのクラウドAIインフラをはじめとするサードパーティー製ソフトウェアの上で事業を運営している。そしてもう1つ、今年に入ってからの出来事がある。スターバックスは、AIを活用した在庫カウントシステムが不正確な集計結果を出したため利用を取りやめ、店舗を手作業での棚卸しに戻したのだ。
この失敗には意味がある。そして、この失敗があるからこそ、今回の動きの信頼性はむしろ高まっているのだ。
スターバックスは、筆者が「AIホローイング(AIによる空洞化)」と呼んできた現象を身をもって学んだ。壊れたプロセスにAIを上乗せしても、プロセスは直らない。破綻が増幅される一方で、その裏では組織本来の業務遂行能力が静かに衰えていくのである。
今回の新たな取り組みでは、まず業務の流れそのものを見直す。在庫管理と保守業務の業務フローを最適化し、それに合わせてシステムを作り、最後にAIで開発を加速させる。
クラウドストレージ大手Box(ボックス)のCEOアーロン・レヴィは、LinkedInへの投稿でこの点をうまく言い表している。「AIの最良のユースケースは、既存のプロセスをそのまま置き換えて効率化するのではなく、仕事のあり方そのものを根本から変えてしまうものになりがちです。何がどう変わるかは業界ごとに異なるため、各社がそれぞれ自分たちなりの答えを模索している段階ですが、これこそがAIの最もエキサイティングで、リターンの大きい使い方であることが多いのです」
この順序こそがキモだ。
データを統合し、業務プロセスを再設計し、その後にAIを導入する。真ん中の段階を飛ばした企業は、誤った判断をより速く自動化する高価なツールを抱えることになる。この順序を守ることは、業務プロセスを根本から設計し直すための有力な実践原則である。


