なぜ今回のスターバックスの動きは違うのか
長年、企業がベンダー(ソフトウェア販売会社)から離れられなかった理由は2つある。
ソフトウェアをゼロから開発するには時間もコストもかかりすぎるうえ、数千店舗を動かしているシステムを入れ替えるのは恐ろしいことだったからだ。そのため企業は、自社の実際の業務にせいぜい70%程度しか適合しないプラットフォームに金を払い、さらに残りの30%を無理やり合わせるためにコンサルタントにも金を払ってきた。
AIを活用した開発は、この計算を変える。
MSNによると、スターバックスの最高技術責任者(CTO)アナンド・バラダラジャンは従業員に対し、ソフトウェア支出を削減できる明確な機会があると語った。同社は現在、ブライアン・ニコルCEOの下で進める総額20億ドル(約3240億円)のコスト削減の一環として、すべての契約とサービスを見直している。
論理は単純だ。
ベンダー製品を使いものにするために自社のエンジニアがいずれにせよ大幅なカスタマイズを強いられており、しかもAIのおかげで同じエンジニアが目的にぴったり合ったツールを従来の何分の一かの時間で開発できるようになったのなら、なぜライセンス料を払い続ける必要があるのか——というわけだ。
これはスターバックス1社の話ではない。
いままさにフォーチュン500(米大企業上位500社)のあらゆる企業のIT予算の内側で進んでいる、「自社開発か外部購入か」の再計算の予告編なのである。
「企業は、AIが単なる機能の1つではなく、業務運営の中枢神経系になりつつあると気づき始めています」と、Quantum Economics(クアンタム・エコノミクス)創業者でCEOのマティ・グリーンスパンは筆者に語った。「今回の動きが示しているのは、企業が自社のAIに対する深い所有権とカスタマイズ性を求め、独自の競争優位を確保するために、重要なテクノロジーを外部ベンダーの手から自社へ引き戻すという戦略的転換です」。なお、この見解は彼のAI金融アシスタント「Korra AI」によって作成されたものだという。


