毎年、財務部門のリーダーたちは資金を捻出する方法を模索しているが、毎年、驚くほど巨額の資金がただ眠ったままになっている。ある2025年の調査によると、米国の主要大企業全体で、実質的に余剰な運転資金が1兆7000億ドル(約275兆円)も稼働しないまま滞留しているという。
その滞留した資金の多くは、売掛金の中に存在する。企業間取引の世界では、デジタルの請求書は実にスムーズに発行される。しかし、資金が回収されたとき、それが何の支払いなのかを特定できないことが往々にしてある。大半の財務リーダーは、これほどの規模の課題は戦略的な問題だと考えがちだ。しかし実際には、もっと身近で、驚くほど簡単に解決できる問題であることが多い。
最も単純な形で説明すると、問題は顧客が請求書に対して支払うときに始まる。資金は移動するものの、財務部門はその支払いが何に対するものなのかを特定できない。つまり、入金の消込や勘定科目の割り当てができず、実質的に所有権が確定していない資金に対して、小切手を振り出すこともできない。ここで留意すべきは、誰もミスをしていないということだ。請求書は正確に送付され、顧客は支払いを行った。それにもかかわらず、財務チームは自動的に処理されるべき取引の追跡調査に、午前中の時間を費やしているのだ。
この原因としては、明細の不足や、カード、ACH(自動決済ハウス)、あるいはステーブルコインといった決済手段の混乱が挙げられる。ほぼすべての取引において、決済条件や決済口座が異なっていることが処理を遅らせる原因となり、ACH決済におけるチャージバック(支払い異議申し立て)や返金も同様に影響する。請求書に対して一部の金額しか支払われない「ショートペイ(過少支払い)」は、さらなる混乱を招く。CFO(最高財務責任者)は、すべての決済が処理されるまで、その資金を原資とした小切手を振り出すことはできない。これが何千もの取引で繰り返されると、正当な理由もなく、大量の資金が宙に浮いた状態で放置されることになる。
どうしてこうなったのか。企業はこのプロセスの半分だけを近代化し、そこで止まってしまった。請求書は何年も前にデジタル化された一方で、支払いと決済の側は扱いにくいまま残された。いずれにせよ、核心にあるのは照合の問題であり、解決策はより優れたデータと、より優れたコミュニケーションに尽きる。
ラストマイルを可視化する
解決策は、筆者が「売掛金(AR)のラストマイル」と呼ぶプロセス、具体的には決済から実際に使用可能な資金となるまでの、不便な最終ステップを可視化(マッピング)することにある。これに必要な投資はわずかであり、投資対効果(ROI)は速やかに現れる。企業の通常業務を阻害することもない。たとえば、18カ月から24カ月も要する大規模なERP(統合基幹業務システム)の導入のような破壊的な変化を伴わないのだ。これにより、融資枠に頼ることなく将来の投資資金を確保でき、CFOとしてはその功績を認められることになる。
最初の実務的な一歩は、拍子抜けするほど基本的だ。地図を描くことである。ほとんどの企業は、自社のラストマイルが実際にどのような姿をしているのかを把握していない。だからこそ、請求書の発行から回収、記帳(ポスティング)までのプロセスを自らたどり、実際に起きていることを書き出すべきなのだ。他者に解決を依頼する前に、まず自社の状況を理解しなければならない。この下調べを事前に行っておくことで、のちのベンダー導入が格段にスムーズになる。
次に、滞留している資金の額を測定する。現在、どれだけの資金が眠っているだろうか。この問題を解消すれば、融資枠からの借り入れをどれだけ減らせるだろうか。未適用の入金残高を確認し、決済チャネルごとにDSO(売上債権回転日数)を分析して、資金が決済されてから実際に適用されるまでのギャップを特定する。数値を分析すれば、特定の決済方法が恒常的にボトルネックになっているかどうかが一目でわかる。現在では、この種の分析は誰でも実行可能だ。
利用できるはずの資金がすべて入った貯金箱を想像してほしい。資金を適切に消し込むことは、貯金箱を丸ごと壊して開けるのではなく、数枚の硬貨を揺すって取り出すようなものだ。だが本当の仕事は、貯金箱に触れる前に起こる。プロセスを理解し、ギャップを見つけ始める段階である。
そこから、AIを活用して照合作業を自動化し、従業員には「なぜ請求書が未払いなのか」を追跡する代わりに、より価値の高い業務に従事させることができる。企業は自社でどれだけの人間が回収業務に携わっているかさえ把握していないことが多い。筆者が以前協業したある大企業は、顧客がすべてフォーチュン500企業であった。顧客との関係がそれぞれ非常に複雑であったため、顧客ごとに個別のチームを置いており、小規模な軍隊並みの人員が必要となっていた。しかし、取引先と連携し、コミュニケーションを密にすれば、そうした摩擦の多くは解消される。
業務改革というと巨大なプロジェクトでなければならないと思われがちだが、多くの場合、ラストマイルから始めるのが最も確実だ。支払いやすい環境を整えるために、ERPを根底から入れ替える必要はない。必要なのは、資金が実際にどこにあるのか、プロセスのどこが破綻しているのか、そしてそれを放置することによって毎日どれほどのコストが発生しているのかを理解することだ。大半の企業はこの部分を省略し、ベンダーを雇ってソリューションを導入したものの、なぜ何も変わらないのかと首を傾げる。そうではなく、まずラストマイルを可視化すること。それこそが、解決への鍵となるのだ。



