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起業家

2026.07.17 11:00

有能な創業者ほど陥る依存の罠と企業価値を高める「仕組み化」の秘訣

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筆者は、年商数千万ドル規模の企業オーナーが、事業売却時に期待を大きく下回る評価額しか得られなかったケースを数多く見てきた。その理由は明白だ。事業がオーナーなしでは成り立たなかったからである。買い手はそのリスクを織り込み、企業価値を大幅に引き下げたのだ。

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一方で、売上規模はその半分程度でありながら、驚くほど高い評価額で売却を実現した経営者もいる。彼らが築いていたのは、自らが日々のオペレーションに関与しなくても回り続け、成長し続ける組織だった。両者の差を生んだのは、事業規模ではない。組織の自立性である。

経営者が築くべきものは、単なるビジネスではなく、資産だ。どれほど優れた事業でも、経営者一人に完全に依存したビジネスは、見栄えのするプレゼン資料とは裏腹に、脆弱な資産に過ぎない。

サラはいかにして軌道修正を果たしたのか

サラが実践した改革に、奇跡のような特効薬はなかった。必要だったのは決断と、それを18ヵ月にわたって一貫して実行し続けることだ。その道のりは、時に痛みを伴うものでもあった。

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彼女が最初に取り組んだのは、現状を可視化することだった。1週間にわたり、自分のもとへ持ち込まれるあらゆる意思決定を記録したのである。受信した全てのメール、出席した全ての会議、メンバーから持ち込まれたあらゆる相談。それらを週末に、「自分にしか判断できないもの」、「適切なトレーニングを行えば他者に任せられるもの」、「そもそも自分が関与する必要のないもの」の3つに分類した。

その結果は、彼女自身の思い込みを覆すものだった。日々忙殺されていた業務のうち、本当に彼女でなければならない仕事は、全体の2割にも満たなかったのである。

このデータが、彼女の進むべき道を示した。サラはCOO(最高執行責任者)を採用し、それまで自ら担っていたオペレーション上の意思決定を委ねた。また、自身の頭の中にあった営業プロセスをマニュアル化してチームと共有し、自らが不在でも機能する週次のリーダーシップ会議の仕組みも整えた。

もちろん、その道のりは平坦ではなかった。ミスは避けられず、自ら介入して判断を下したい衝動に駆られる場面も何度となくあった。それでも彼女は踏みとどまった。チームが失敗から学び、成長する余地を意図的に残したのである。なぜなら、その過程で生じる痛みこそが、自立した組織を築くために避けては通れない代償だと理解していたからだ。

彼女は、大改革によって一気に全てを変えようとはしなかった。小さな変化を積み重ね、その効果を確かめながら、次の段階へと進んでいった。その粘り強さと忍耐こそが、改革を成功へと導いたのである。

18ヵ月後、サラは1ヵ月間にわたってポルトガルを旅した。その間も、ビジネスは順調に動き続けた。売上は落ちず、顧客が離れることもなく、チームが混乱することもなかった。

そして、事業の買い手候補との交渉で、彼女が語るストーリーは以前とは全く違うものになっていた。彼女は「私がこのビジネスを築いた」とは言わなかった。「私がいなくても成長し続けるビジネスを築いた」と語ったのである。この変化こそが、彼女のビジネスの価値を大きく引き上げた。 

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編集=朝香実

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