世界はアメリカを選び続けている
建国から250年を経たいまも、なぜアメリカはなお成長のエンジンを回し続けることができているのか。
アメリカのイノベーションの強みは、それが中央集権的ではなく、政権交代などの政治的な変化にも左右されにくい点にある。1800年代の鉄道から始まり、電力網、航空、電話、集積回路、インターネット、そして現在の人工知能(AI)に至るまで、次々と訪れる進歩の波を民間資本が資金面で支えてきた。世界知的所有権機関(WIPO)は、アメリカをイノベーション(技術革新)で世界3位、市場とビジネスの洗練度では世界1位と評価しており、シリコンバレーは地球上で最もイノベーションが集約している地域のひとつに数えられる。
一部のアメリカ国民がそのことを十分に実感していないとしても、外国の投資家は確かにそれを理解している。米商務省の経済分析局(BEA)の統計によれば、外国資本によるアメリカへの投資残高は2025年末時点で65兆ドル(現在の為替レートで約1京500兆円)近くに達し、21世紀初めから約7倍に増加した。
このコラムで何度も述べてきたように、資本は最も手厚く扱われる場所へ向かう。その尺度に照らせば、世界はいまもなおアメリカを選び続けている。
法の支配が何よりも重要な理由
誤解のないように言えば、アメリカは現実にいくつもの逆風にさらされており、なかにはまさしく前例のないものもある。債務の膨張、政府機関や資本主義そのものへの国民の信頼低下、都合の悪い場合には法の支配を軽視してもよいと考える風潮が共和党、民主党の双方で徐々に広がっていることなどだ。
アメリカという国家の実験の源流がどこにあるのかを思い起こそう。1776年のアメリカ独立のはるか前、イギリスのマグナ・カルタ(大憲章)は、国王であっても法に拘束されること、人民は圧政を敷く支配者に対して自らの権利を主張できること、これらの権利を守るため国家権力は制限され得ること、といった原則を打ち立てた。
こうした理念は、アメリカの独立宣言と憲法に直接受け継がれている。適正手続(デュープロセス)や、陪審裁判を受ける権利、「代表なくして課税なし」という原則だ。いかなる人も、法による保護なしに生命、自由、財産を奪われることはない。イギリス生まれの政治活動家にして革命思想家のトマス・ペインが、政治パンフレット『コモンセンス』に「法こそが王」だと書いたとおりだ。


