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起業家

2026.07.12 07:10

なぜエネルギー・産業系スタートアップはドイツの2大都市圏に集まるのか

stock.adobe.com

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欧州がエネルギー移行とインダストリー4.0の次なる波を模索するなか、欧州の第4次産業革命(「4IR」)を牽引するテクノロジースタートアップが、ドイツのある特定の地域へ大挙して押し寄せている。それが「ミュンヘン〜ドレスデン回廊」だ。

ドイツスタートアップ連盟(Deutscher Startup-Verband)と両都市の商業登記データを集計した結果によると、ミュンヘンとドレスデンの大都市圏には現在およそ3000社のスタートアップが拠点を構え、その数はさらに増え続けている。

これらのスタートアップの4分の1以上が、自社をエネルギー、産業、クリーンテクノロジー、または脱炭素モビリティの企業と位置づけている。その数が膨らみ続けるにつれ、彼らは欧州全域にわたる「エネルギー移行(energiewende)」を推進する上で、ますます重要な役割を果たすようになっている。

これは偶然の産物ではなく、約400km離れたドイツの2つの主要な都市圏の間で、数十年をかけて築かれてきた独自のスタートアップエコシステムの結果なのだ。

異なる特徴を持つ2つの都市の魅力

ミュンヘンとドレスデンは、それぞれスタートアップを惹きつける独自の魅力を持っており、両都市の近さと接続性の良さがそれをさらに際立たせている。

ミュンヘンの強みは、歴史的に強固なベンチャーキャピタル(VC)市場にある。また、有望なスタートアップへのアーリーステージからレイターステージにわたる投資機会をうかがう、バイエルン地方や北欧の主要なファミリーオフィスの拠点でもある。

この地域で最も活発なVC企業には、HV Capital、Wellington Partners、Target Capital、Munich Venture Partners、UVC Partners、Occident、Picus Capital、10x Founders、Possible Ventures、WorldFund VC、Future Energy Ventures、Vsquared Ventures、Venture Stars、Ananda Impact Ventures、Fraunhofer Ventureなどがある。

首都ベルリンに本拠を置くVC企業でさえ、ミュンヘンに大規模な拠点を構えることを選んでいる。業界のデータベースによると、ミュンヘン市内には100社以上のVC企業が存在し、自動車メーカーのBMWから、売上高ベースで世界最大の再保険会社であるミュンヘン再保険(Munich Re)にいたるまで、大企業の投資部門と肩を並べている。

「画期的なアイデアにはシード資金が必要だ。そしてスタートアップによってそのアイデアの有効性が証明された後は、そのポテンシャルを実現するために規模を拡大するための資金が必要になる。ミュンヘンのVC市場、およびそれが一翼を担う独自の広範なエコシステムにより、この都市はスタートアップの創業者にとって欧州で最も魅力的な場所の1つとなっている」と、Vsquared Venturesの創設パートナーであるヘルベルト・マンゲシウスは語る。

Vsquared Venturesのポートフォリオは、脱炭素航空スタートアップのVaeridionから、新世代のバッテリーリサイクル企業であるCylib、次世代ロケットメーカーのIsar Aerospace、リチウムシリコン電池材料企業のGroup 14にまで及ぶ。こうしたポートフォリオの構成は、ミュンヘンのVCとしては極めて典型的なものだ。

このVC市場は、ミュンヘン工科大学やマックス・プランク研究所といった学術機関が提供する優れた研究力によって補完されている。

一方、ドレスデンは、ハードウェア工学におけるザクセン地方の強固な歴史と、独自の工科大学を誇る。過去20年間で、同都市は材料科学、物理的なクリーンエネルギーインフラ、グリーン水素プラント、および重工業テクノロジーの分野へと、ますますシフトしてきた。

これらはすべて、ドイツ政府や民間企業が積極的に推進する戦略的な産業資本投資によって支えられている。ドレスデンはまた、ドイツの「シリコン・ザクセン」における欧州の主要なハブとしても機能しており、光工学(フォトニクス)、半導体、量子技術に力を入れている。

ミュンヘン〜ドレスデン回廊には、Airbus、Bosch、Infineon Technologies、Siemensなど、数多くの大手企業のイノベーションキャンパスも点在している。

イノベーションを育む最適な環境

これらの要因がすべて組み合わさることで、スタートアップはイノベーションと忍耐強い資本投資の両方を育む最適な環境において、居心地の良さを感じることができると、Quantum Diamondsの共同創設者兼CEOであるケビン・ベルクホフは言う。

元マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントであるベルクホフと、共同創設者で量子センシングのエキスパートであるフレミング・ブルックマイヤー、そして彼らのチームは、半導体などのさまざまなハイテク産業における測定を「再定義」する可能性を秘めた、原子サイズの量子センサーを開発している。

「現在の緊迫した地政学的状況のなか、私たちは窒素-空孔中心を持つ合成ダイヤモンドベースの量子センサーを商用化し、半導体チップの非破壊かつ高解像度の磁気イメージングの提供を目指している」とブルックマイヤーは説明する。

これにより、メーカーは複雑な2.5Dおよび3Dチップ・アーキテクチャ内のマイクロスケールの欠陥を正確に特定できるようになり、骨の折れる精密工学プロセスの時間とコストを削減できる、と彼は付け加えた。

このスタートアップは、ミュンヘンの製造拠点向けに1億5200万ユーロ(1億7500万ドル(約283億円))を確保しており、ベルクホフはこれ以上の場所は考えられないと述べた。

「この都市のスタートアップエコシステムは、私たちのこれまでのストーリーと、私たちが目指す成功において不可欠なものだった。私たちの拠点が、独自の技術やソフトウェアコンポーネントを生産するという欧州連合(EU)の計画において極めて重要な役割を果たし、欧州がグローバルなテック分野で米国や中国に遅れをとらないように貢献できることを願っている」

この施設が今年稼働すれば、ベルクホフと彼のチームによって約200人の地元雇用が創出されることは言うまでもない。

商業用核融合発電所の開発を手がけるエネルギー・スタートアップ、Proxima Fusionの共同創設者兼CEOであるフランチェスコ・ショルティーノも、この地域を最適な活動拠点として見出したことについて同様の意見を述べた。

「私たちは2023年にミュンヘンのマックス・プランクプラズマ物理学研究所からスピンアウトした。したがって、厳密に言えば私たちは地元生まれであり、優秀な人材を引きつけ採用する場所という点も含め、これほど恵まれた環境は他にはない」

同社の中核的な事業は、「ステラレーター型」磁気閉じ込め核融合技術の商業化にある。これまでに株式と助成金で2億ユーロ(2億3000万ドル(約372億円))以上を調達している。簡単に言うと、ステラレーターとは外部の磁石を用いてプラズマを閉じ込める核融合発電装置のことだ。

「ステラレーターの最適化、コンピューター設計、および超電導における最近の進歩を活用するためには、コンピュータ数値制御(CNC)の技術者、つまり金属、プラスチック、複合材料などの原材料から精密部品を仕上げるために、デジタル制御された工作機械のセットアップ、プログラミング、操作を行う、高度なスキルを持った製造プロフェッショナルが必要になる。ドイツ全般、そして特にこの地域には、そのための人材が集まっている」

コネクションの構築とメンター制度

この地域のもう1つの強みは、地域全体を強固に結びつける役割を果たす、メンターや支援者(コネクター)の活発なコミュニティが存在していることだ。彼らはこの地域を拠点に、アーリーステージのディープテック・スタートアップのスケールアップを支援するプログラムを提供している。その多くは、数十年の専門知識、経験、および人脈を持つシリアルアントレプレナー(連続起業家)自身によって運営されている。

その代表的な存在の1つである「Ignite Next」は、共同創設者のマルクス・ボール(CEO)とアロイス・エーダー(CTO)が率いており、独自の興味深い背景を持っている。2人は、かつてグローバル半導体メーカー傘下にあった「Intel Ignite」プログラムの出身者だ。

Intelが同プログラムから手を引いた際、ボールとエーダーは、Intelを含む広範な業界の支援を得て、このプログラムを独立させた。

「現在、独立して運営されているIgnite Nextは、InfineonやIntel自身を含む世界の主要なテクノロジー企業を結集し、この地域(およびそれ以外)のスタートアップを支援する協調モデルを提供し、欧州のディープテック創業者を支援している」とボールは語る。

エーダーはこう指摘する。「私たちはスタートアップに対する単なるメンター、マッチメーカー、コンサルタントではなく、そのすべての役割を兼ね備えた存在だ。また、厳密に言えば、従来のアクセラレーターでもない。スタートアップと既存の産業界との間を埋める『ミッシングリンク(失われた環)』だと私たちは考えている」

「私たちの実践的で、株式の希薄化を伴わない(ノン・ダイリューティブな)プログラムは、創業者が特許などの知的財産(IP)を多く含む画期的な技術を、アーリーステージからレイターステージの資金調達、さらにはその先へとスケールアップするのを支援する」

ボールはこう付け加えた。「スタートアップの創業者には、製品やソリューションを生み出す素晴らしいアイデアや深い専門知識があるかもしれない。しかし、それをマネタイズや共同パートナーシップ、あるいは慎重な業務運営といった次のステージへ進めるための知識、自信、人脈を必ずしも持っているわけではない。そこで私たちの出番となる」

「この問題は、人々が思っている以上に一般的だ。実際、過去数十年にわたり、欧州のディープテック・スタートアップは、確固たる科学的基盤と初期の資金調達は得られているものの、産業界との連携やスケールアップへの支援が限定的であるという根深い課題に直面していることに、私はよく気づかされてきた」

そのため、Ignite Nextのフレームワークにより、スタートアップは半導体、光工学、高度製造技術、ロボティクス、人工知能から量子コンピューティングにいたるまで、幅広いフロンティア技術分野にわたる複数のパートナーと協力することができる。

「ミュンヘン〜ドレスデン地域は、そのための理想的な環境を提供しており、私たちはその回廊の両端に拠点を置いている」とエーダーは付け加えた。

さらにボールとエーダーは、彼らのプログラムが創業者の所有権を犠牲にすることなく(株式を希薄化させずに)スケールアップを支援する「創業者第一(ファウンダー・ファースト)」の体系化されたプログラムであり、300人以上の業界シニアメンターが提供する「ハイタッチなアプローチ(密接な支援)」を伴うものであることを強調している。

「最大の目的は、創業者に対して、私たちが属する広範なディープテック・エコシステムにおける技術的な専門知識、市場への洞察、および投資家にアピールするための準備体制を整える支援に直接アクセスできるようにすることだ」とボールは語る。

スタートアップ向けの手元資金の現状

これらすべてを総合すると、企業の評価額データがその実態を物語っている。Dealroomのデータによると、ミュンヘンはベルリンを除けばドイツにおける最大の牽引役であり続けており、年間約30億ユーロ(35億ドル(約5670億円))規模の資金調達を確保し、登記されたスタートアップの企業価値合計は1010億ユーロ(1150億ドル(約18兆6000億円))を超えている。

これは、1990年以降に設立されたVCの支援を受けるドイツのスタートアップ全体の企業価値合計の4分の1以上を占める。ドレスデンの市場規模はその5分の1ほどだが、極めて対象を絞って運営されている。

Ignite Nextのボールとエーダー、およびVsquared Venturesのマンゲシウスは、米国の年間平均VC調達額や、近年アラブ首長国連邦やサウジアラビアが支援するVC投資機関によって投入された資金と比べれば、これらの数字が控えめであることを認めている。

しかし、欧州全体の観点から見れば、これらの数字は極めて大きく、よりターゲットが絞られており、こうしたVC資金の一部は日常的にこの地域へと流入している。

そして総じて言えば、ミュンヘン〜ドレスデン回廊は、投資可能な利用可能資金(ドライパウダー)の面でも、提供できる支援ネットワークの面でも、競合する多くの欧州のハブを凌駕している。

欧州のエネルギー産業およびプロセス産業のセグメントが、自律型技術、人工知能、および低炭素から脱炭素にいたるソリューションの導入を進めるなか、同地域のスタートアップの現在の動向に基づけば、この傾向は今後も続くと予想される。

forbes.com 原文

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