エネルギー効率
クアルコムは米国時間6月24日、データセンター向けCPU、AI推論アクセラレーター、メモリー、接続技術を統合した製品ロードマップを発表している。
AI投資の重心は、学習から推論、すなわち学習済みモデルを実際の用途で活用する処理へと移りつつある。この変化は見かけ以上に大きい。推論は2029年までにAI演算の3分の2を占めるようになり、AIシステムのライフサイクル全体にかかるコストの80〜90%に相当すると見込まれている。タスクを実行し、ソフトウェアを操作し、自律的に判断を下すAIシステムが普及すれば、効率的な推論ハードウェアへの需要はさらに高まるだろう。
クアルコムのチップは、まさにこの用途のために設計されている。ピーク性能よりも電力効率とクエリー(処理要求)1件当たりのコストが重視されるようになっており、AIインフラが現実のエネルギー制約に直面するなか、この観点の重要性は増す一方だ。大規模データセンターの建設には12〜24カ月かかる。さらに、米国の主要市場で大容量の送電網接続を確保するには、36〜84カ月を要することもある。クアルコムの強みは、1ミリワットの消費電力が勝負を分けるスマートフォン向けチップの設計に数十年を費やしてきた点にある。この設計思想は、AIワークロードを大規模に運用する際のエネルギーコストの抑制にも生かせる可能性がある。
エヌビディアやAMDのAIアクセラレーターの大半は、演算チップと広帯域メモリー(HBM)を一体化するCoWoSと呼ばれる特殊なパッケージング技術に依存している。CoWoSの需要は供給を大幅に上回っており、AIハードウェア製造における最も深刻なボトルネックの1つとなっている。エヌビディアは2026年までのTSMCのCoWoS生産能力の半分以上を押さえたと報じられており、競合他社は残りの生産枠を奪い合わざるを得ない状況だ。
クアルコムのAI200はHBMではなくLPDDR5Xメモリーを採用するため、HBMやCoWoSに起因する供給制約の一部を避けられる可能性がある。ただし、LPDDR5Xを採用するAI200はメモリー帯域幅に制約があり、クアルコムは次世代のAI250とAI300で独自の高帯域メモリー技術「HBC」へ移行する計画だ。
クアルコム株が2倍になるシナリオ
数字を検証してみよう。
クアルコムの2025会計年度の売上高は約440億ドル(約7.1兆円)だった。2026会計年度については、メモリー不足がデバイス出荷に影響を及ぼす可能性や、アップルがクアルコム製モデムからの脱却を進めていることから、市場予想の平均は約426億ドル(約6.9兆円)にとどまる。それでも、AI、CPUチップ、車載分野に牽引されて売上高が実際に年率15%前後で成長すれば、2029年には650億ドル(約10.5兆円)に達する可能性がある。純利益率を約25%(直近12カ月の平均をやや上回る水準)に据え置いたとしても、年間純利益は約160億ドル(約2.59兆円)となる計算だ。自社株買いが今後も続く公算が大きいため、発行済み株式数は直近四半期の約10億7000万株から2029年には約9億5000万株まで減少すると当社は予測している。クアルコムの利益率と競合他社との比較も参照してほしい。
この場合、1株当たり利益(EPS)は約17ドル(約2749円)となる。次に、バリュエーション(株価評価)を検討しよう。半導体業界全体が予想利益の35倍超で取引されているのに対し、クアルコムは約17倍にとどまっている。控えめに22倍の倍率を適用しても──これはAIによる成長ストーリーの可能性を示唆しつつ、なお急騰した同業他社に比べれば割安な水準だが──株価は370ドル(約5万9822円)となる。現在の株価のほぼ2倍である。


