3年間にわたり、AIブームはクアルコム(Qualcomm。ティッカー:QCOM)を蚊帳の外に置いてきた。
エヌビディア(NVDA)は大きく成長した。AMDも大幅に伸びた。AIがもたらした利益のほぼすべてを、データセンター向け半導体メーカーがさらっていったのだ。一方のクアルコムはスマートフォン事業に軸足を置いたままで、買い替えサイクルの鈍化と、アップル(AAPL)との取引関係の縮小という制約を抱えていた。
だが、この構図は今変わりつつあるのかもしれない。
クアルコムの株価は4月中旬以降、約50%上昇した。この動きは、より大きな変化を示唆している。AIがデータセンターを離れ、デバイスそのものに組み込まれつつあるのだ。クアルコムが数十年かけて磨いてきた電力効率、接続性、低遅延の演算処理は、AIに欠かせない新たな要素として浮上している。この移行が現実のものとなれば、クアルコム株には現在の2倍となる370ドル(約6万1438円)に向けての、現実的な道筋が見えてくる。
エッジAIへの移行
現在のAIの枠組みは集中型コンピューティングに依存しており、ワークロード(処理負荷)はエヌビディアのような企業が担うデータセンターに集中している。しかし、このモデルを数十億台のデバイスに広げるのは難しい。すべての推論をクラウド経由で処理するのは、コストが高く、遅く、エネルギーを大量に消費するからだ。次の段階はローカル推論、つまりAIをデバイス上で直接実行することだ。この方式はより高速で、プライバシー面でも優れ、常時接続を必要としない。
この変化は、クアルコムの強みとまさに合致する。
クアルコムは長年、電力効率と接続性を磨き上げてきたが。この2つこそ、エッジAIを規定する最大の制約要因である。同社のSnapdragonプラットフォームはすでにスマートフォンやパソコン、そして増え続ける車種に搭載されている。車載事業だけでも、設計採用(デザインウィン)案件の総額は650億ドル(10.5兆円)に上る。さらに、Dragonwingなどの新しいプラットフォームや、買収したArduinoをはじめとするエコシステムの取り込みにより、その裾野はロボットや産業用AIにも広がっている。クアルコムは、携帯端末向けの部品を供給するだけの企業から、ネットワークにつながったインテリジェントなデバイス向けに包括的なコンピューティング基盤を提供する企業へと変貌しつつあるのだ。



