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2026.07.27 10:00

OpenAIが挑むヘルスケア戦略 サム・アルトマンが自ら売り込み医師・患者・病院を取り込む

Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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AI業界の巨人OpenAIは医療分野に全力を注ぎ、2026年に入ってからの約6カ月で、3つの新製品を投入した。一般利用者向け「ChatGPT ヘルスケア(ChatGPT Health)」、病院や医療システムなどの組織向け「ChatGPT for Healthcare」、個々の医師や薬剤師などを対象とする臨床業務向けの「医療従事者向け ChatGPT(ChatGPT for Clinicians)」だ。その一方で、毎週、健康やウェルネスに関する助言を求めてChatGPTを利用する世界2億3000万人超に対し、十分に正確な回答を提供するという課題が残っている。

OpenAI、病院への売り込みにサム・アルトマンを投入

OpenAIが自社のヘルスケア構想を全米最大級の医療システム(複数の病院を傘下に運営する医療グループ)に売り込むとき、同社はしばしば、病院のCEOも無視できない1人の人物を送り込む。サム・アルトマン(41)だ。

アルトマンは、OpenAIの共同創業者にして億万長者のCEOである。懐疑的な相手を説得し、契約へと動かすのが誰よりもうまい人物でもある。OpenAIが次のコンピューティング時代の中核を担うと訴え、投資家や取締役会、各国政府の支持を取り付けてきた。今度はその主張を、自ら病院に対して展開している。

アルトマン自身が営業の現場に加わっていることからも、OpenAIが医療を成長戦略の重要な柱と位置付けていることが分かる。2026年1月には、シダーズ・サイナイ医療センターやHCAヘルスケアを含む8つの主要医療グループが、医療機関向けツール「ChatGPT for Healthcare」の顧客になったと発表した。

2026年、消費者・医療機関・臨床医に向け3つの新製品を発表

OpenAIは、毎週ChatGPTに助言を求める世界2億3000万人超の人々に向けて健康関連の回答を改善するため、数百人の医師を起用した。

また先に挙げたように、医療機関向けの「ChatGPT for Healthcare」、米国の認証済み臨床専門職などの個人向け「医療従事者向け ChatGPT(ChatGPT for Clinicians)」、一般利用者向けの「ChatGPT ヘルスケア(ChatGPT Health)」という3つの新製品を投入した。

医療機関向け「ChatGPT for Healthcare」

医療機関向けの「ChatGPT for Healthcare」は、臨床医、事務担当者、研究者が組織内で利用する法人版だ。臨床上の判断や文書作成、患者向け資料の作成を支援し、医療情報を扱うためのセキュリティーや管理機能を備えている。

(編注:ChatGPT for Healthcareは、医療機関向けの製品群・事業ブランド「OpenAI API for Healthcare」の一部)

米国の認証済み臨床専門職などの個人向け「医療従事者向け ChatGPT」

「医療従事者向け ChatGPT」は、米国で資格が確認された医師、ナースプラクティショナー、フィジシャンアシスタント、薬剤師などが個人で利用する製品だ。医学的根拠の確認、臨床記録の作成、医学研究などを支援する。

(編注:ナースプラクティショナーおよびフィジシャンアシスタントは、米国の医療職で、日本には対応する制度・資格が存在しない)

米国の一般利用者向け「ChatGPT ヘルスケア」

一般利用者向けの「ChatGPT ヘルスケア」は、ChatGPT内に設けられた健康・ウェルネス専用機能だ。利用者は自身の医療記録やApple Health、MyFitnessPalなどを接続し、個人の健康情報を踏まえた回答を得られる。OpenAIは2026年7月23日、米国の18歳以上の対象ユーザーに対し、ウェブ版とiOS版で段階的な提供を開始した。

OpenAIのAIモデルは、これらの自社製品だけでなく、臨床記録の作成や検査結果の説明に使われる他社の医療ツールにも採用されている。

OpenAIの医療戦略を率いるネイト・グロスは「医療はOpenAIにとって最も重要な事業分野の1つだ」と語る。2025年にOpenAIに参画したグロスは、エモリー大学医学部で医学博士号(MD)、ハーバード大学でMBAを取得した。以前、時価総額40億ドル(約6520億円。1ドル=163円換算)のヘルスケアネットワーク「Doximity(ドキシミティ)」を共同創業している。OpenAIは教育や金融といった他の巨大市場も狙っているが、グロスは「健康の問題は誰もが経験する。これはすべての人を助ける機会だ」と話す。

そもそも、ヘルスケアは米国経済全体の約18%を占めている。そしてAIには、消費者が健康についてより良い判断を下し、医師がより良い医療を提供し、医療システムが業務をより効率的に運営するのを助ける巨大な潜在力がある──正しく実行できれば、の話だ。

巨額赤字と競争激化の中、医療を成長の柱に据えるOpenAI

OpenAIによるヘルスケアへの全面的な攻勢は、同社にとって成否を分ける正念場に重なる。OpenAIは3年前にChatGPTでAI革命を巻き起こしたものの、Anthropicやグーグルといった急成長するライバルにその優位性の一部を譲り渡したように見える。

2025年の売上高は130億ドル(約2.12兆円)を記録した。しかし同年の純損失は、2024年の50億ドル(約8120億円)から約8倍の390億ドル(約6兆3570億円)に膨れ上がったと報じられている

4月には、OpenAIが重要な売上目標やユーザー数の目標を達成できなかったと報じられた。評価額8520億ドル(約138.88兆円)を誇るこの巨人は、6月に非公開で新規株式公開(IPO)を申請したが、投資家からの圧力により、IPOを来年まで延期することを検討していると伝えられている

IPOを控えた同社はヘルスケア事業の財務指標を開示しないものの、ヘルスケアが将来の成功の鍵を握ることは明らかだ。

その市場でOpenAIは、当初から法人向けに注力し独自のヘルスケア製品群を持つAnthropic、さらにグーグル、そして同じ領域を狙うあらゆるヘルステック企業に勝たなければならない。モデルの機能がますますコモディティ化する中で、病院の利益率が極めて低いことから、価格競争にも直面することになる。「消費者向けで彼らが成功する能力についてはかなり楽観的だ」と、ヘルスケアに特化したイージス・ベンチャーズ(Aegis Ventures)のマネージングパートナー、ジョン・ビードルは言う。「エンタープライズ側については、そこまで確信が持てない」。

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