「命を救われた」という患者──ChatGPTの示唆が甲状腺がんの発見につながる
2024年2月、ノースカロライナ州拠点のマーケティング会社創設者、ローレン・バノン(42)は体調不良を感じ始めた。朝と夜に指を曲げるのが困難になった。何カ月もの間、彼女はその痛みを無視していた。その後、痛みは胃へと移っていった。一連の検査の後、医師は彼女に、血液検査では現れないタイプの関節リウマチであると告げた。
しかし彼女は納得がいかず、他の多くの人々と同じように、答えを求めてChatGPTを頼った。バノンが自身の症状について一連の質問を入力したところ、AIは免疫システムが甲状腺を攻撃する疾患である「橋本病(慢性甲状腺炎)」の可能性を示唆した。甲状腺の超音波検査を行ったところそれが事実であることが判明し、医師は2つの小さなしこりを発見した。バノンは進行性の甲状腺がんに罹患していたのだ。2025年1月、外科医は彼女の甲状腺と、がんが転移していた2つのリンパ節を切除した。
「お世辞ではなく、ChatGPTは文字通り私の命を救ってくれたと本当に信じている」とバノンは語る。
健康やウェルネスに関する質問をChatGPTに投げかける2億人超の人々の大半は、バノンほど切迫した状況にはない。「階段を上るときに膝が痛むのはなぜか?」「骨密度を維持するのに役立つ運動は何か?」といった単純な質問をする人が多い。医療用語の解読や、検査報告書の分析、薬の作用を理解するために利用しているのだ。しかし、なかには原因の分からない症状について質問し、それが結果的に深刻な病気であることが判明する場合もある。
「現在、医療はChatGPTで特に利用の多い用途の1つだ」と、OpenAで医療AIを統括するカラン・シンハルは言う。「良い結果をもたらす可能性もあれば、害を及ぼす可能性もある。それでも、人々を助けられる余地は非常に大きい」。
臨床医不足の米国では、健康相談がChatGPTの最も活発な用途の1つ
米国では、臨床医の不足と過重な事務作業により、医師は燃え尽き症候群に陥り、患者は必要な予約を取るのに苦労している。地方においては、成人の3分の1以上が、本来ならプライマリケア(初期診療)の診療所で受けられる治療のために救急外来(ER)を利用している。地方の郡の86%には、開業している心臓専門医が1人もいない。
「必要な医療を受けられないことは、非常に深刻な問題だ。何億人もの人々が、ChatGPTから重要な情報を得るという体験をしている」と、OpenAIのヘルス製品部門責任者であるアシュリー・アレクサンダーは言う。
「医師の診察を受けるまでに6カ月かかるかもしれない。恐怖におびえ、これからどうなるのか分からない人もいる。ChatGPTは診療の代わりにはならず、その点は非常に明確に伝えている。それでも、気力を失うほど不安で恐ろしい時期に、ほかに入手する手段がなかった情報を与えてくれる」。


