史上初の超高層ビルは1885年にシカゴで建設され、10階建て、高さ138フィート(42m)だった。目的は、土地と空間が貴重な高密度都市で、居住・就労空間を最大化することにあった。居住可能な空間を増やす唯一の選択肢は、垂直方向へ伸ばすことだった。
それから1世紀以上を経た2012年、初の垂直農場であるSky Greenがシンガポールに建設された(図1)。高さは30フィート(9m)で、前述の史上初の超高層ビルよりかなり低かったが、限られた不動産を活用し、都市住民が地元で新鮮な食料にアクセスできるようにするという点で、同様の動機に基づいていた。現在、最も高い垂直農場はその高さを2倍以上に伸ばしている。Greenphytoの垂直農場は高さ75フィート(25m)で、驚くことではないが、これもまた世界で最も人口密度の高い都市国家の1つであるシンガポールにある。温室と同様、水耕栽培(土を使わず、根を水ベースの栄養豊富な溶液に直接浸して植物を育てる方法)を採用し、人工知能(AI)と先進ロボティクスによって稼働している。
この10年間で、垂直農業は爆発的な成長を遂げてきた。地元で栽培された新鮮でオーガニックかつ農薬不使用の野菜を求める世界的な動きと歩調を合わせている。米国、日本、中国、スウェーデンがこうした取り組みを主導する一方で、中東も輸入依存を最小限に抑え、水の消費量を減らすため、この農業方式を推進している。屋内の気候制御型垂直農場は、従来の屋外農業と比べて使用水量を95%削減できる。2025年時点で、垂直農場産の農産物の世界市場は約70億ドル(約1兆1400億円)で、2035年までに倍増すると予測されている。
持続可能な農業のもう1つの選択肢は温室農業である。ただし、温室ははるかに広い土地面積を必要とし、高さもそれほどないため、高密度の都市環境には実用的ではない。垂直農場では水耕栽培が主流で、空中栽培(根を完全に空中に吊るし、高圧の自動ミストで水と栄養分を与える方式)のシェアは20%である。空中栽培の利点は、根への酸素供給量が多いことで、成長サイクルの短縮と収量の向上につながる点だ。この技術は導入コストが高く、高級で高利益率の農産物や医薬品原料に使われている。
Pinterra──持続可能な農業のための設備
2023年に創業した同社は、インドのシリコンバレーと呼ばれるベンガルールに拠点を置き、連続起業家のゴスカン・アラヴァムダン氏が生み出した企業である。Pinterraは、葉物野菜やハーブなどの植物を屋内外で栽培するための空中栽培設備一式とロボティクスを提供している。
図2は、屋内空中栽培用の設備と照明を示しており、主要顧客は欧州と北米にいる。設備の筐体内では、温度と二酸化炭素濃度が制御される。植物の根は、植物の成長に合わせて伸びる独自の特許取得済みセルロース膜に吊るされている。
ユニットはAフレーム構造で構成されている。自動ミスターが水と栄養分の混合液を噴霧し、植物の成熟に応じてデューティサイクルと噴霧位置が動的に調整される。ミスターは垂直パイプ上を移動し、筐体内部の高さ(80フィート)にわたり、鋼製コードで引き上げられる(図3)。
LED照明は24時間365日のスケジュールで供給される。ベビーリーフ、ホウレンソウ、ケールなどの作物では、播種から収穫までの一般的な期間は2〜3週間である。屋内垂直農場の主な利点は、処理能力、通年栽培、成長サイクルの速さ、そして製品をプレミアム価格で販売できることだ。利用可能な空間で見ると、床面積6m²から栽培面積72m²が得られる(12倍)。成長基材が不要なため、運用コストは低い。ただし、屋外ユニットより導入コストは高く、継続的なLED照明と環境制御が必要なため、エネルギー消費量も多い。
屋外ユニットは、膜、空中栽培、ミスト噴霧の点で屋内ユニットと同様である。自然光を利用できる場合はそれを使え、温度と二酸化炭素を制御する必要がないため、エネルギーコストは低い。ミスト噴霧の動的調整と拡張可能な膜により、床面積1m²当たりの収量は、固定式チャネルの水耕栽培(図1に示すようなもの)と比べて3倍になる。屋外農場は通常、収穫までの期間が長く(5週間)、稼働できる季節も限られる。何らかの害虫防除も必要だ。図4は、Pinterraが支援する屋外垂直農場を示している。
アラヴァムダン氏は、CEA(Controlled Environment Agriculture、環境制御型農業)におけるPinterraの歩みに情熱を注いでいる。「Pinterraは、シンプルな問いから始まりました。より少ないもの──より少ない空間、より少ない水、より少ない栽培培地、より少ない廃棄物──で、より多くを育てられないか、と。私たちが構築したのは、植物がよりクリーンで、より制御され、より効率的な根の環境で育つことを可能にする高密度空中栽培プラットフォームです。目標は、先進的な栽培システムを環境制御型農業にとって実用的なものにすることです」
Boostable──より良い未来を育む
BoostableはPinterraの投資家である。同社は自らを「欧州とインドに根差し、アジアと北米にリーチを持つ、組み込み型のオペレーター兼投資家であり、次世代技術を解き放ち、主要企業へと拡大させる存在」と位置付けている。財務投資に加え、同社は市場へのリーチ、経営経験、人脈を通じて、企業のグローバルな拡大を支援している。エロイ・クールクー氏は共同創業者兼パートナーである。欧州、アジア、北米の食品業界での経験を持ち、東南アジアのさまざまな企業で事業再建やM&Aによるエグジットを主導してきた。
クールクー氏は、Boostableの投資重点領域の3本柱として、健康、エネルギー効率、越境企業を挙げる。次世代農業はこれらの柱の重要な要素であり、関心領域は次の通りである。
- 垂直農業:床面積1m²当たりの収量を最大化し、水の消費量を最小化する
- 持続可能な原料:コストや味を損なうことなく、測定可能な便益をもたらす拡張可能なプラットフォームに焦点を当てる
- 栄養効率の高い食品:精密栄養とGLP-1併用製品を通じて実現する
- AIと自律化による生産効率の向上:収穫サイクル時間と労働投入量を削減する
- 食品セクターにおけるM&Aと統合:最近のEU・インド貿易協定により、インドからの投資と輸出は競争力を持つ
Boostableは2023年の創業以来、Pinterraと協業してきた。クールクー氏はこの協業について次のように述べている。「私たちがPinterraを支援したのは、同社が単なる垂直農業企業ではなく、環境制御型農業をより生産的で、モジュール化され、経済的に成立するものにするためのプラットフォーム技術だからです。大量の栽培培地への依存を減らし、空間効率を高め、高密度の空中栽培生産を可能にすることで、Pinterraは現代の食料生産における最も困難な制約のいくつか、すなわち土地、水、エネルギー、ユニットエコノミクスに対処しています」
食料は希少になりつつある。特に、持続可能な食料はそうだ。エネルギー、住宅、その他の基本的な生活要素と同じである。AoT®とフィジカルAIは、環境制御型農業を収益性のある現実にしつつある。



