44℃を超える熱波に見舞われた2026年夏のヨーロッパ。ベルギーと日本で二拠点生活を送る著者が現地で目にした人々の暮らしの変化を通して感じた、気候変動が社会に与える影響とは。
「雨が欲しい、雨が欲しい」
ベルギーの友人からそのメッセージが届いたとき、私は京都にいた。台風と梅雨の影響で、朝から雨が降り続いていた。
なんとも言えない気持ちになった。ベルギー人は、太陽が好きだ。冬は曇天と雨が何カ月も続き、日照不足でビタミンD不足になる人が続出する。だから夏になると、太陽を浴びるために、みんな南フランスやスペインへ飛んでいく。そのベルギー人が、37度の猛暑に耐えかねて、雨乞いをしているのだ。
2026年6月、ヨーロッパを熱波が飲み込んでいた。
数字に表れた、異常な夏
フランスでは、アパートのベランダに置いたフライパンでクレープが焼けた、というリールがSNSを駆け巡った。冗談のようで、冗談ではない。37度で20分窓辺に放置したフライパンでは、バターがあっという間にとけ、クレープが焼きあがった。「熱波クレープ(heatwave crepe)」 の完成だ。
パリジャンたちはセーヌ川に飛び込み、サン・マルタン運河で泳いだ。熱を逃がそうとした人々が、監視のない水域にも次々と飛び込み、フランス首相は6月23日の危機会議で、6月18日から22日の5日間で40人が溺死したと発表した。
フランス南西部ボルドー近郊では気温が44℃を超え、スペイン南部では45℃超えが報告された。スイスのバーゼルでは1940年代以来となる6月の最高気温記録が更新された。
これは単なる「異常気象」ではない。ヨーロッパは世界で最も温暖化が速い大陸であり、その速度は世界平均の約2倍だといわれている(コペルニクス気候変動サービス)。今年の熱波は5月下旬と6月の2度にわたって押し寄せ、今も続いている。「2カ月で2回の大型熱波」という現実が、静かに、しかし確実に、欧州の夏の定義を書き換えている。
なぜヨーロッパではクーラーが普及しないのか
なぜヨーロッパでは熱波がこれほど騒がれるのか。日本とアメリカが約9割を超える中、IEAによるとヨーロッパ全体では約2割。ヨーロッパの住宅の約80%に、クーラーがない。
筆者が暮らすブリュッセルの家にも、クーラーはない。設置できない理由は複合的だ。
まず、建物の問題がある。ヨーロッパでは築100年超の建物が現役で使われている。リノベーション済みでも、室外機の設置や配管工事が構造上困難なケースが多い。ドイツ・ベルリンのある新聞社のオフィスを訪れたとき、「暑くないんですか」と聞いた私に担当者はこう言った。
「個別に取り付けることができない。建物全体の空調を変えるしかない」。



