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暮らし

2026.07.12 14:15

欧州、44℃の夏に、冷房なし。熱波と気候変動が変えた「当たり前」

猛暑のベルギーにて。人もこころなしかまばらだ(友人提供)

次に、文化的認識だ。クーラーの冷気は「体に悪い」という感覚が根強い。ベルギー・ブリュッセルの緯度は約50.8°Nで、北海道の稚内(約45°N)よりさらに北だ。もともと夏の最高気温が23〜24℃前後なのだ。

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例えば、車に乗っているときに「暑い」と冷房をつけようものなら「風邪ひいちゃうよ」と、同乗者から否定的なコメントをもらう。人工的な冷却への心理的抵抗がある。「本当はいやだけど、暑そうにしている犬のために」としぶしぶつける姿をみてきた。

窓を開ける。それがヨーロッパの夏の「普通」だった。2022年にはじめてベルギーで夏を過ごしたとき、私は半袖を一度も着なかった。朝晩は肌寒く、昼でも長袖が手放せなかった。それがベルギーの夏だった。だが今、その「普通」が通用しなくなっている。

加えて、欧州の電気料金は高く、これまでの気候では費用対効果が低かったという経済的事情もある。筆者がベルギーで払う電気代は月およそ85ユーロ(約1万5700円)。日本の一般家庭の平均的な電気代の約1.5倍だ。それでもクーラーなしの生活が前提になっている。もしエアコンを導入すれば、さらに跳ね上がる。

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 室内よりも風通しのよい木陰で暑さから逃れるひとたち(友人提供)
 室内よりも風通しのよい木陰で暑さから逃れるひとたち(友人提供)

逃げ場がないから、声を上げる

年初まで日本に留学していたフランス人の友人(20代)が、ある日さらりとこう言った。

「今のうちにアジアを回っておきたい。飛行機は環境に良くないから、フランスに戻ったら特別な用事がない限り、長距離飛行機に乗ってアジアに来ることはないだろう」

主張でも、スローガンでもなかった。ただの、会話だった。

彼は日本に留学中、「二酸化炭素を多く排出するから」という理由で、国内の移動をすべて電車で済ませた。福岡へもLCCを使わず、新幹線で行った。シェアハウスで私が「ちょっと暑いから」とクーラーをつけようとした際には、窓を開けるよう促した。

ヨーロッパの若者が気候変動に敏感な理由は、環境意識の高さだけではない。「逃げ場がない」という身体的な経験が、その感覚を育てているのだろう。

日本では、夏の猛暑日に外を出歩く人は少ない。地下街があり、コンビニがあり、エアコンの効いた電車がある。だがヨーロッパに、そのインフラはない。地下道は発達しておらず、家にはクーラーがない。熱波が来たとき、文字通り「逃げる場所がない」のだ。だから彼らは声を上げる。

イプソスが31カ国を対象に実施した「People and Climate Change 2026」(2026年4月、23704人対象)によると、「個人が今すぐ行動しなければ将来世代を裏切ることになる」という問いへの日本人の同意率は、2021年から26年の5年間で24ポイント低下した。これは調査対象26カ国の中で最大級の落ち幅だ。さらに「気候変動はもう手遅れだ」と答えた日本人は33%にのぼり、31カ国平均の25%を大幅に上回った。

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文=雨宮百子

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