2026年、恵比寿ガーデンプレイスタワーに本社を移したウォンテッドリー。同社が働く場所に求めたものとは。人が夢中になり、思いがけない発想が生まれる環境について、代表取締役CEO 仲暁子とサッポロ不動産開発代表取締役社長執行役員 富岡良之が語り合う。
「人類を前進させていくのは、少しクレイジーで仕事に夢中になっている人たち」だとウォンテッドリー代表取締役CEO 仲暁子(写真左。以下、仲)は語る。
「例えば、ライト兄弟が最初に空を飛べたのは、資本のバックアップがある競争相手よりも本当にピュアに夢中になっていたから。人類の前進には仕事に没頭する、夢中になるということが必要で、私たちはその状態を生む環境をテクノロジーで実現したいと考えています」(仲)
同社が掲げるミッションは「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」。共感を軸に、働く人と組織を支えるサービスを展開している。背景にあるのは、「やりたいこと」「できること」「求められていること」が重なる場所でこそ、人は最も活躍できるという考えだ。
人が力を発揮するためには、その人を取り巻く環境も重要な用途となる。恵比寿ガーデンプレイスを運営するサッポロ不動産開発 代表取締役社長執行役員の富岡良之(写真右。以下、富岡)は、働く人の創造性を引き出す場の価値を重視している。
「イノベーションは、オフィスのなかだけで生まれるものではないと思っています。働く人が仕事から少し離れ、異なる価値観や日常に触れることで、これまでになかった気づきやひらめきが生まれる。オンとオフをシームレスに行き来しながら、多様な人と交わることが、創造性を育むのではないでしょうか」(富岡)
恵比寿ガーデンプレイスはオフィスのほか、商業施設や飲食店、映画館や美術館などが共存する複合施設。働く人が一歩外へ出れば、さまざまな人々の営みに触れることができる。2026年3月、ウォンテッドリーは恵比寿ガーデンプレイスタワーに拠点を移した。仲自身、来訪者とカフェを利用したり、時間がある際は緑豊かな施設内を散策することもあるという。
「この場所は学生時代に訪れた時からずっと好きで、憧れの場所でした。アールデコ調で少しヨーロピアンな印象もあり、歴史を感じさせるデザインが残っていてすごくいいなと。あえて空間に余白を残している贅沢さも含めて、この場所ならではの価値だと感じています」(仲)
同社は今回の移転でオフィスをワンフロアに集約した。
「以前はビジネスが上階、開発が下階と分かれており、交流が生まれにくい環境でしたが、その状況は大きく変わりました。フロアの中心にコーヒーメーカーなどを配置したことで、自然に人が交わるようになり、部署を超えた日常的な会話が生まれています。コーポレート部門も同じフロアになり、業務上の相談もこれまで以上に円滑になりましたね」(仲)
ユニークなのは、新オフィスに掲げた「大人の秘密基地」というコンセプトだ。
「何もしないと真面目な人が真面目に働くようになっていく。そうではなく、ちょっとふざけて面白いことを考えられる場所にしたかったんです。我々はまだ何者でもない。ガレージで一から始めようという気持ちで、新しい価値をどんどん生み出していきたいと思っています」(仲)
人が交わる場をデザインする
空間へのこだわりに加え、両社に共通するのは、人と人が交わる機会を意図的に設計していることだ。サッポロ不動産開発は入居企業同士の接点づくりを進めている。
「施設内のホールに卓球台を並べて行う卓球大会はものすごく盛り上がります。ほかにも、多様な人が自然につながる場として、バーカウンターを備えた『EBISU THE SPOTLIGHT』という空間を設けました。テーマごとに講師を招き、バックグラウンドの異なる方々が会話を交わし、そこから何かが生まれていく。そんなきっかけをつくりたいと思っています」(富岡)
ウォンテッドリーもまた、社内コミュニケーションを活性化する仕掛けを定期的に実施している。
「社内では月に一度、『オールカルチャーランチ』を開催しています。新入社員からベテランまでが交ざって対話する場を設け、新しい仲間が組織やカルチャーになじむきっかけにしています」(仲)
「私たちも部署や役職を超えて気軽に交流する『ビールデー』を定期的に開催しています。そうした取り組みを通じて、お酒を介したコミュニケーションの力を実感し、恵比寿ガーデンプレイス内のYEBISU BREWERY TOKYOを会場に、テナント同士の交流を促す催しを企画しました。きっかけさえあれば、その後のコミュニケーションはおのずと広がっていく。だからこそ、この街、施設ならではの資産を生かしながら、人と人が自然につながる機会をつくっていきたいと考えています」(富岡)

仲は、テクノロジーが進化するほど、人と人が直接会う価値は高まると語る。
「採用市場では、学生がAIで作成したエントリーシートを企業側のAIが評価することも珍しくありません。ただ、最終的に働くのは生身の人間です。だからこそ、人と人が直接出会う機会は欠かせない。私たちは、ビジネスSNS『Wantedly』に、社長や現場の社員など話したい相手をリクエストできる『指名カジュアル面談』を設けています。AIが最初の接点をつくる時代だからこそ、人間同士が実際に会う価値は高まっている。CDの普及によって、生で聴くライブの価値が際立ったのと同じことが、人の営みのさまざまな場面で起きているのだと思います」(仲)
直接会うことの価値が高まる今、出会いを生む場をどう育てるか。富岡は、恵比寿ガーデンプレイスが歩んできた時間に、その答えがあると考えている。
「この場所は、ビール工場の時代を含めると140年近い歴史があります。商店会や町内会の皆さま、地域の企業の方々とは、世代を超えて関係を築いてきました。お祭りでは神輿が施設の敷地内に入ってくる。そうした晴れの舞台として使っていただきながら、私たちのイベントには地域の方々が参加してくださる。互いにできることをもち寄りながら、長い時間をかけて関係を育んできました」(富岡)
その蓄積の先に、富岡は街の新たな展開を見据えている。恵比寿周辺エリアでは政府が主導するグローバル・スタートアップ・キャンパス構想が計画されている。
「構想が実現すれば、研究者の方々やそのご家族がこの街に加わり、新しい文化が生まれ、人と人との交流の幅もいっそう広がっていきます。働く人も、暮らす住民も、地域に集う企業も、それぞれの強みを生かしながら街全体で新しい価値を生み出していく。そうした動きの中心に恵比寿ガーデンプレイスがありたいと考えています。ここから世界に通じるものが生まれる──そんな街を、地域の皆さまとともに育てていきたいですね」(富岡)
EBISU THE SPOTLIGHT

サッポロ不動産開発が運営する「EBISU THE SPOTLIGHT」は、8席のバーカウンターと約40人を収容できるイベントスペースを備えた常設のコミュニティ空間。企業やスタートアップ、投資家、大学、地域の人々が気軽に集い、ピッチイベントやメンタリング、ネットワーキング、ワークショップなどを通じて交流を深める。偶発的な出会いから新たな共創を生み出し、「ひらめきが生まれるまち・恵比寿」の実現を目指す。
サッポロ不動産開発
https://www.sapporo-re.jp
なか・あきこ◎ウォンテッドリー 代表取締役CEO。2008年ゴールドマン・サックス証券入社。その後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画、10年にウォンテッドリーを創業。17年に東証グロース(旧東証マザーズ)に上場。
とみおか・よしゆき◎サッポロ不動産開発 代表取締役社長執行役員。1993年サッポロビール(現サッポロホールディングス)入社。2018年、SAPPORO U.S.A., INC President/CEO、23年サッポロ不動産開発取締役執行役員、25年取締役常務執行役員を歴任し、26年3月より現職。




