企業が顧客対応にAI受付を導入しようとする際、こうしたエージェント型音声には「共感力」が必要だとよく言われる。それは確かに正しい。ただし、あくまである程度までの話だ。新たな研究によれば「過度に温かみのあるチャットボットは不快感を与えることがある」という。ちょうどよい水準(ゴルディロックス・レベル)は、さまざまな要素に左右される。
音声AIは急速に普及しつつある。ガートナーはこれを2026年の最重要トレンドのひとつに挙げている。この関心の高まりには理由がある。AI受付は、多くの企業が抱えるコミュニケーション課題の解決策として不可欠な存在になりつつあるのだ。
Nextiva(ネクスティバ)では、クライアントから驚くべき成果が寄せられている。「週間のリード獲得数が40%増えた」とフィットネススタジオのフランチャイズオーナーは語る。ある歯科医院のオーナーは「毎月数千ドル規模の新規ビジネスが上乗せされている」と話す。法律事務所の代表は、当社のAI受付「XBert」について「導入初週で元が取れた。取りこぼしを防いだ1件の顧客電話だけで、1カ月分のコストをまかなえた」と述べている。
しかしこうした成果は、単に電話に応答することだけで得られるものではない。顧客体験を丁寧に調整することによって初めて実現するのだ。
AIの過剰な追従はビジネスを台無しにする
「音声コマースにおけるAIの共感」に関する新たな研究で、米国を含む4カ国の研究者たちが問題を提起している。AIの共感表現は、「タスクの要求と合致していない」場合、顧客に「不気味」と感じられることがあるのだ。たとえば、分析的な作業をしている場面で(顧客にとって特に感情的でもない状況で)温かさを表現されると、かえって不快に感じられる可能性がある。
「この見解に沿って言えば、過度な丁寧さや共感的な装飾は、しばしばAIのおべっか(sycophancy)と解釈され……ユーザーを苛立たせ、全体的なユーザー体験を損なうことが示されている」と、著者のアレックス・マリ、エルトゥールル・ウイサル、ジェフリー・A・ブルックス、アマニ・アラベドは書いている。彼らはAIのおべっかを「ユーザーに同意したり肯定したりする過剰な傾向」と定義する。
顧客が好意的に反応する共感の度合いを評価したところ、研究チームは、それが顧客の購入しようとしている商品の種類によって異なることを明らかにした。
実用目的の購買と快楽目的の購買
人々が特定の機能的な目的を果たす商品を求めている場合、エージェント型AIからの共感にはあまり関心を示さない。一方、楽しさを重視する購買では、より高いレベルの共感が歓迎される。
研究者らはこう報告している。「目標が主に道具的である実用的な文脈では、AIの共感は不要、気が散る、あるいは疑わしいものと受け止められる可能性がある……対照的に、感情や体験価値が中心となる快楽的な文脈では、AIの共感は善意があり、支援的なものと受け止められやすい」。大きな理由の1つは、「快楽的な場面で有効な共感的シグナルが、実用目的の購買では懐疑心や操作されているという認識を引き起こす可能性がある」ことだ。
顧客に操作されていると感じさせる危険性――この問題は、私のチームが最良の顧客体験を提供するためにクライアントを支援するなかで、長年注視してきた課題だ。Nextivaは「AIシステムは透明性、説明責任を持ち、顧客の自律性を尊重すべきだ」と説明している。特に警戒すべき重要な問題のひとつは、「AIが詐欺的あるいは操作的な方法で用いられること」だ。
推測に頼らない
このバランス調整をどう乗り越えるかは、一見難しく感じるかもしれない。しかし経験上、必ずしもそうではない。解決策は自動化できる。
そこで登場するのが、AIを活用した統合カスタマーエクスペリエンス管理(UCXM)だ。UCXMプラットフォームは、AI受付の共感表現をあらゆる文脈に合わせて調整でき、さらに個々の顧客ごとに最適化することさえ可能にする。
このプラットフォームは、企業が顧客について保有するすべての情報を集約し、これまでにない包括的な全体像を作り上げる。また、あらゆるチャネルにわたる他の顧客とのやり取りからも学習を重ねる。そうした情報を総合し、あらゆるシナリオで最も効果的と考えられる対応を導き出すのだ。
たとえば、顧客が商品について問い合わせたり、問題を相談したりするためにコンタクトセンターに電話したとき、UCXMは同様のシナリオで多くの消費者が求める共感レベルを把握している。さらに、その顧客が過去に共感表現に対してどのように反応したかも知っている。
先の研究は、「ユーザーのニーズ、好み、状況的制約」に反応する「文脈適応型フレームワーク」の必要性を説いている。私も同感だ。この種の柔軟性は不可欠である。優れたプラットフォームは、言語的・非言語的な合図の両方を捉え、その出力をリアルタイムに調整できる。
「ユーザーの感情を認識し、それに応じてトーンや内容を適応させることで、VA(AI音声アシスタント)はユーザーの文脈に対する感受性と応答性を示す」と研究者らは書く。「共感的な再構成(empathic reframing)を通じて、レコメンデーションは操作的というより、支援的で協働的なものとして受け取られやすくなり、ユーザーの主体性の感覚が保たれる」
企業が利用するコミュニケーションプラットフォームは、こうしたすべてを理解したチームによって設計され、支えられているべきだ。エージェント型音声エージェントが新たな常識となるなか、最大の差別化要因となるのは体験の質である。こうしたニュアンスに配慮することで、これらのツールがもたらすビジネスの飛躍的成長を、より高い確率で実現できるだろう。



