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2026.07.10 09:37

決済インフラの次の顧客はAI──エージェント経済が抱える2つの未解決問題

Adobe Stock

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私が暗号資産取引所で決済統合に携わっていた2023年3月、SilvergateSignature Bankが数日のうちに相次いで破綻するのを目の当たりにした。この2行は、暗号資産業界の多くが金融システムとドルをやり取りする際の要となっていた銀行だった。両行が連鎖的に取り付け騒ぎに見舞われ、いずれか一方だけに依存していた企業は資金移動の手段を失った。私たちのチームはその期間、冗長化の作業に費やし、以後、取引所が単一のプロバイダーに依存することはなくなった。

教訓は明快だった。資金移動の能力が単一のプロバイダーに依存していれば、そのプロバイダーは単一障害点になる。そして単一障害点は、いずれ必ず機能不全に陥り得る。

最近このことをよく考えるのは、決済インフラの次の大口顧客が「人間」ではないからだ。それはAIエージェントであり、そのために構築を進めるほぼすべての企業が、同じ過ちを繰り返しかねないと私は考えている。

多くの人が見過ごしているレイヤー

注目はすべてモデルに集まっている。どれが最も優秀か、最も安いか、最も速いか、といったことだ。その一方で、その中間のレイヤー、すなわちエージェントが自らに欠けている機能をどう発見し、どう支払うのか、という部分にはほとんど関心が向けられていないように思える。このレイヤーはほとんど存在せず、エージェントの能力の天井を形成している。エージェントが事前に接続されていないサービスを必要とした瞬間、失敗するか、到達できない答えを推測することになる。

現在、エージェントはどのようにして新しい機能を発見するのか。基本的には、発見しない。誰かがMCP(モデル・コンテキスト・プロトコル)サーバーに接続し、エージェントは与えられたツールしか知らない。エージェントの機能に関する「Google」のような広く普及した仕組みや、聞いたこともないサービスを見つけて自ら使える場所は存在しない。エージェントは、事前に接続されたサービスの範囲でしか能力を発揮できないのだ。より高度な自律性を実現するには、必要なものをその場で見つけ出せなくてはならず、そのレイヤーは今なお進化の途上にある。

単一のレールが勝者にならない理由

発見は問題の半分にすぎない。もう半分は決済だ。エージェントにとって、この2つは1つのステップに集約される。すなわち、サービスを見つけ、それに支払うことである。Coinbaseのx402は、口座もカードも不要でステーブルコインでウェブ上での支払いを可能にする。StripeとTempoのMachine Payments Protocol(MPP)は、ステーブルコインやカードなどでの決済を扱う。CircleのArcは、金融機関の外国為替取引向けに構築されたステーブルコインチェーンだ。それぞれが異なる断片を解決している。

つい「どれが勝つのか」を問い、それに合わせて構築して済ませたくなる。だが、それは間違った問いだと私は考える。取引所において、「どの銀行パートナーに依存すべきか」という問いの答えは、「決して1つだけに頼らないこと」だった。単一のプロトコルに合わせて構築すれば、同じ問題を再現することになる。エージェントが1つのレールでしか支払えず、それがダウンすれば、動作は止まってしまう。

私の考えでは、企業は最終的にどのプロトコルが勝つかに注力するよりも、それらすべてを横断的に抽象化するレイヤーを設計することに注力すべきだ。そうすれば、エージェントの取引能力が、単一のレールが稼働し続けているか、低コストであるか、オンラインであるかに依存することはなくなる。

主要プレイヤーはすでに自社プロトコルに紐づいた独自のサービスカタログを構築しつつある。例えば、MPPのサービスディレクトリ、Circleのエージェントマーケットプレイス、CoinbaseのAgentic Marketは、3つのカタログと3つのプロトコルだが、相互運用性はない。ここに企業が取り組める余地がある。レール群の上に立つレイヤーを設けることで、エージェントは特定の1つに依存せず、すべてを横断してAPIを発見し支払えるようになる。これは私の会社が取り組んでいる領域だが、この記事はそれを売り込むためではなく、単一の勝者は現れないと私が考えており、この分野で構築を進める他のリーダーにも検討してほしい論点だからこそ書いている。

これからの12カ月

企業はすでに、検索者がAIになるとSEOの定石が通用しなくなり得ることを学びつつある。生成エンジン最適化(GEO)という新たな分野が、一夜にして立ち上がったかのように現れた。同じ変化は、有料サービスにさらに大きな影響を及ぼす可能性があると私は考えている。ステーブルコインは2025年に33兆ドル(約5360兆円)を動かしたのであり、こうした決済を大規模に処理するレールはすでに存在する。エージェントが機能を発見し、評価し、支払うようになれば、「発見可能であること」と「支払い可能であること」がすべてになる。

今後12カ月以内に、単一機能で成功する企業が現れるかもしれない。他社に真似できないものを作ったからではなく、エージェントが最も見つけやすく、アクセスしやすく、支払いやすいサービスだったからだ。エージェントが確実に発見し、支払うようになった最初のサービスがデフォルトとなり、デフォルトは複利的に効いてくる。買い手が同じ呼び出しを何千回も行うとき、「わずかに優れている」ことよりも「デフォルトである」ことのほうがはるかに大きな価値を持つ。その機会の窓は今開いているが、長くは開いていない。

リーダーへの教訓

この分野のリーダーが認識しておくべき現実の障害もある。GENIUS ActMiCAはステーブルコイン発行者向けのルールを明確化したが、いずれも人間が関与しないエージェントの取引には触れていない。責任の所在も定まっておらず、使用するレールに依存する。カード決済には紛争解決の仕組みが組み込まれているが、ステーブルコイン決済は高速かつ最終的であり、簡単に取り消す方法がない。

アイデンティティももう1つの未解決問題だ。ベンダーは、エージェントが誰であるか、支払いが許可されていたか、そしてポリシーの範囲内で行動していたかを把握する必要がある。しかし、いずれも待つ理由にはならない。むしろ今すぐ構築し、単一の勝者に賭けるのではなく、複数のレールをサポートすべき理由なのだ。

2023年に破綻した銀行は、生き残る企業とは正しいプロバイダーを選んだ企業ではなく、すべてを1つに賭けなかった企業であることを私に教えてくれた。エージェント経済も、2つの面で同じ試練に直面している。エージェントは、事前に接続されていなかったサービスを発見し、機能する任意のレールでそれらに支払わなくてはならない。どちらも未解決だ。

今動くリーダーは、単一の賭けではなく複数のプロトコルにわたって、競合よりも先に自社サービスをエージェントから発見可能かつ支払い可能にすることができる。エージェントは、必要なものを見つけ、支払う準備ができている。唯一の問いは、彼らがあなたを見つけられるかどうかだ。

特定の企業、製品、または技術への言及は、文脈と明確性を提供するためのものである。これらの言及は、推奨や推薦として解釈されるべきではない。

forbes.com 原文

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