マイクロンテクノロジー(Micron Technology。ティッカー:MU)の株価は過去1年間で約8倍に上昇し、時価総額は1兆ドル(約161兆円。1ドル=161円換算)を超えた。この急騰を支えているのが、高帯域幅メモリー(HBM)である。HBMは、エヌビディア(NVDA)やAMD(AMD)のAIアクセラレーターと組み合わせて使われ、AIインフラを整備するうえで中核的な役割を果たしている。
これまでメモリー事業は、半導体業界の中でも特に市況の変動が激しい分野の1つだった。DRAM市場は、3~4年ごとに好況と不況を繰り返してきた。マイクロンを巡る過去のメモリー市況サイクルについては、詳しい解説も参照されたい。
しかし今回は、市場を取り巻く多くの条件が従来とは異なっているように見える。AI関連の顧客は複数年の供給契約を結び始めており、少数のハイパースケーラーが需要の大きな部分を占めている。さらに、HBMは単独の汎用品として売られるのではなく、AIアクセラレーターと密接に組み合わせて使われる。
では、こうした構造変化によって、業界で長く繰り返されてきた市況の波は変わるのだろうか。投資家が見極めるべきなのは、この点である。
AI半導体との結びつきが強まり、顧客は少数に集中
HBMは、もはや一般的な汎用メモリーではない。通常のDRAMは独立したメモリースロットに装着するが、HBMは高度な半導体パッケージ技術を使い、AIアクセラレーターと直接一体化する。
また、HBMは特定世代のGPUに合わせて共同で設計し、認定を受けなければならない。そのため、採用に向けた評価には、汎用DRAMよりもはるかに長い時間がかかる。HBMはGPUパッケージの一部を構成するため、通常は新世代のGPUが登場するたびに、それに対応する新世代のHBMも必要になる。
こうした変化によって、マイクロンの顧客構成も変わりつつある。従来は、多数のパソコンメーカーやサーバーのOEMメーカー、クラウドサービス事業者にメモリーを供給していた。しかし現在のHBM需要は、エヌビディア、AMD、そして独自のAI半導体を開発する一部のハイパースケーラーに大きく集中している。
認定に長い時間がかかることは、マイクロンにとって有利に働く。いったんメモリー供給企業が特定のGPU向けに承認されると、顧客は簡単には供給元を変更しない。新たな供給企業を検証して採用するまでには、数四半期ではなく数年かかる可能性があるためだ。そのため、顧客が供給元を切り替える負担は大きくなり、マイクロンにとっては売上の見通しも立てやすくなる。
わずか1社の減速でもHBMの売上を直撃しかねない
一方で、顧客が少数に集中することにはリスクもある。主要なGPU顧客やハイパースケーラーのうち、わずか1社でもAIインフラへの支出を減らせば、マイクロンのHBM売上は大きな影響を受ける可能性がある。
過去のメモリー市況サイクルでは、ある市場の需要が落ち込んでも、別の市場の需要が補うことが多かった。しかしHBMの場合、需要を支える顧客や用途が限られるため、こうした下支えはかなり弱い。



