本当に新しい要素はテイク・オア・ペイ契約、16件の契約が売上の半分超を固める
今回の市況サイクルが従来と異なる可能性を示す最も有力な材料は、長期のテイク・オア・ペイ契約(take-or-pay agreements)である。これは、顧客が製品を引き取るか、引き取らなくても代金を支払う契約であり、DRAM業界では珍しい。
マイクロンは、複数年にわたるテイク・オア・ペイ契約を16件確保している。予定するすべての契約を締結すれば、同社は売上高の半分超をこうした契約で確保できると見込んでいる。また、そのうち約40%には固定価格または上限価格が適用される見通しである。マイクロンの成長率と利益率については、同業他社との比較も参照されたい。
こうした契約を結んでも、リスクがなくなるわけではない。しかし、マイクロンと顧客の間でリスクを分ける仕組みは変わる。マイクロンは売上の見通しを立てやすくなり、急激な価格下落の影響も受けにくくなる。その代わり、顧客は市場環境が悪化しても、契約した分の生産能力を確保し、代金を支払うことに同意する。
売上の約半分は契約の外に残り、価格下落の恐れも
とはいえ、この契約で守られるのは事業の一部にすぎない。マイクロンの売上高の約半分は、依然としてこの契約の対象外だ。
そのため、AIインフラ投資が想定を下回った場合や、将来のAIモデルが予想以上に少ないメモリーで動くようになった場合には、契約対象外の事業で価格下落圧力が強まる可能性がある。
AIサービスの費用を持つ企業が、支出に慎重になり始める
大手テクノロジー企業は今年、設備投資に6000億ドル(約96.6兆円)超を投じると見込まれている。そのかなりの部分が、AIデータセンターや、それを支えるGPUとHBMに向けられる。
しかし、最終的にAIサービスの費用を負担する企業は、支出に対して慎重な姿勢を取り始める可能性がある。
テスラなどが従業員のAIツール利用に上限を設定
テスラは米国時間7月6日時点で、従業員がAIツールに使える金額を週200ドル(約3.22万円)までに制限している。Uber、メタ、Walmartも同様の制限を導入した。AIツールでは利用量に応じて料金が増えるため、企業側が実際の費用を把握しやすくなったためである。
こうした措置そのものはまだ比較的小さい。しかし、企業がAI関連の支出を際限なく増やせるものとは考えず、費用対効果を厳しく見始めたことを示している。
企業のAI導入が遅れ、HBM需要の長期継続に疑問が生じる可能性
同時に、企業によるAI導入は、多くの人が予想していたほど速く進んでいない。既存の業務にAIを組み込み、業務の進め方を見直し、従業員に受け入れてもらうことは、今も大きな課題である。
企業がAI投資から十分な成果を得られなければ、将来のAIインフラ支出の伸びはいずれ鈍る可能性がある。そうなれば、現在の高水準のHBM需要が今後何年も続くという見方も揺らぐことになる。


