サプライチェーンはかつてないペースでテクノロジーに投資しているが、その投資利益率は依然として成果に結びついていない。ガートナーによると、「2028年までに、サプライチェーンのデジタル導入の取り組みの60%は、学習と能力開発への投資不足により、約束された価値を実現できない」という。
これは極めて示唆的な兆候であり、課題の捉え方を変えるものだ。問題はもはや、企業がテクノロジーに十分投資しているかどうかではない。その投資を実務で機能させるために必要な能力を構築しているかどうかである。
支出の動向もこの点を裏づけている。2025年末にサプライチェーンの専門家を対象に実施された「2026 MHI Annual Industry Report」(登録が必要)では、組織の56%がサプライチェーンのイノベーションへの支出を増やす計画だと回答した。一方、PwCの「2026 Digital Trends in Operations Survey」では、「オペレーション部門のリーダーの89%が、自社のテクノロジー投資は期待された成果を十分に上げていないと述べた」。
構図は明らかだ。資本は流れ込んでいるが、実行が追いついていない。
いま問うべきなのは、役割、スキル、ワークフローがそうした投資と並行して進化しているかどうかである。サプライチェーンのパフォーマンスの次の段階は、誰が最も多く投資するかで決まるのではない。すでに構築したものを使って、誰が最も効果的に実行できるかで決まると筆者は考えている。
つまり、サプライチェーンのパフォーマンスの中心にあるのはテクノロジーではなく、人材戦略である。
さまざまな業界の顧客と仕事をするなかで、筆者はこのギャップを日常的に目にしている。企業は大規模なテクノロジー投資を行っているが、最も大きなリターンを得ている組織はたいてい、導入定着、スキル、運用規律にも同じくらい意図的に投資している。
人材戦略が顧客と接点を持つ場所
人材戦略が人事の領域を超えたことを示す最も明確な兆候は、それが事業上の優先事項のどこに表れるかである。ガートナーが2025年5月に物流リーダーを対象に実施した調査によると、2030年までの最優先課題は、サービス提供範囲の拡大による顧客体験の向上であった。これはデジタル化の推進や、物理的な実行プロセスの自動化を上回る順位だった。
この変化は示唆に富む。企業が自動化やAIに投資していても、最終的な成功の尺度は依然として顧客との接点にある。混乱への対応について以前の記事で述べたように、真の競争優位は、舞台裏のシステムに圧力がかかっているときでさえ、顧客が一貫性を感じられるようにすることにある。
実行が崩れるとき、その問題は外部から見ると、人材に関する議論にはほとんど見えない。遅い対応、一貫性を欠くコミュニケーション、納期や履行の約束に対する信頼低下として表れる。そうした環境では、人材戦略は顧客戦略と切り離せなくなる。
導入定着を投資の一部として扱う
テクノロジー投資が期待を下回る理由の1つは、組織が実装に注力する一方で、導入定着を軽視しがちなことにあると筆者は考えている。多くのリーダーは「十分な人材と専門性の不足」にも苦慮しており、それが投資の停滞を招くことがある。
問題は、企業が新しいツールを導入しているかどうかではなく、現場のチームがそれを受け入れ、信頼し、リアルタイムで行動を起こせるようサポートされているか、という点にある。人材の実行力を高める取り組みは、デジタルトランスフォーメーションと別物ではない。投資をパフォーマンスへと変える仕組みそのものだ。
人材戦略の定義を見直す
ここで多くの議論がなお軌道を外していると筆者は感じる。人材戦略という言葉は人員配置計画のように聞こえることがあるが、より重要なのは、スキル、ワークフロー、意思決定権限がオペレーティングモデルの変化に追いついているかどうかである。
さらに考慮すべきより深い問題もある。世界経済フォーラムは、2030年までに中核的スキルの39%が変化すると推定しており、オペレーティングモデルが進化していることを改めて示している。サプライチェーンがより複雑化し、データ主導となり、例外対応中心になるにつれ、能力ギャップは拡大するだろう。
人材戦略をビジネス推進のレバーにする
サービスの信頼性は、チームが変化をどれだけ迅速に吸収し、部門を横断して連携し、より良い情報に基づいて行動できるかに左右される。物流リーダーの約70%は、「将来の物流機能にはデータアナリストと自動化エンジニアが配置される」と述べた。この進化はすでに始まっており、パフォーマンスの実現方法を変えつつある。AIは洞察を提供するが、それを行動に移す直感を提供するのは依然として人である。
これを正しく実行できる企業とは、投資と実行の距離を縮められる企業である。つまり、より速く導入し、より早く例外に対処し、説明責任を失うことなくデータと自動化をより有効に活用できるチームを持つ企業だ。より変動の大きい市場では、その能力こそが顧客体験を守り、最終的に成長を支える。
レトリックではなく、能力を軸に率いる
サプライチェーンに必要なのは、変革をめぐる声高な議論ではない。より実践的な議論である。
組織が前進するには、リーダーはインフラ、テクノロジー、ネットワーク設計に向けるのと同じ真剣さで、人材戦略を扱わなければならない。パフォーマンスは、人、ツール、ワークフローを、現在のサプライチェーンの実際の運用のあり方に合わせられるかどうかにかかっている。
筆者の見解では、特に重要な優先事項は3つある。
1. 導入定着を前提ではなく、測定可能なものにする。
人材の実行力を高める取り組み(トレーニング、チェンジマネジメント、利用)を投資判断の一部として扱い、成果に対する明確な説明責任を持たせる。これは、実装のマイルストーンを測定するのと同じ厳密さで、導入率、利用パターン、プロセス改善を測定することを意味する。
2. 仕事の進め方に役割を合わせる。
サプライチェーンがよりデータ主導かつ例外対応中心になるにつれ、意思決定、部門横断の調整、デジタルリテラシーは、処理能力と同じくらい重要になる。リーダーは、責任範囲が現在の意思決定の実態を反映しているかを確認するため、役割と研修プログラムを定期的に見直すべきである。
3. 人材戦略を顧客成果に直接結びつける。
サービスの信頼性、復旧の速さ、コミュニケーションの質はいずれも、チームがプレッシャー下で実行できるようどれだけ整備されているかを反映している。最も効果的な組織は、人材投資を社内の生産性指標だけでなく、顧客が実感するサービス指標に結びつけている。
結局のところ、サプライチェーンの信頼性はシステムだけで築かれるものではない。人がそれをどれだけ効果的に使いこなすかによって築かれるのだ。



