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2015.11.11 07:00

立命館大学は、なぜ10年間で採択数も金額も倍増できたのか。

Frannyanne / Shutterstock

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科学研究費の採択状況で、大学関係者の注目を集めている立命館大学。
その採択支援策は、「立命館モデル」と称してもよいものになっている。


立命館大学は、私立大学では慶應義塾大学、早稲田大学、日本大学に次いで4位の採択数で、この10年間で採択件数、金額共に2倍以上になり、全国順位も60位から26位に上昇した(2014年度)。

医学部を持ち医学関連の採択数が多い慶應、教員数が立命館の4倍の早稲田などの事情を考慮しても採択数の伸びは著しく、教員数が3倍で医学部を持つ日大と比べるならば大健闘といえるだろう。

しかも研究分野別で見ても、人文系では「人文地理学」「社会学」「経営学」は新規採択累計数がトップで、理工系でも「知能ロボティクス」「マルチメディアデータベース」「環境影響評価」、生命・健康系でも「スポーツ科学」「応用健康科学」などがベスト10入りするように各学部が満遍なく高い採択実績を残している。

背景にあるのが2006年度(~10年度)から始まった「研究高度化中期計画」の策定だ。
研究を支援する野口義文・研究部事務部長は、「現在は16年度以降の第3次計画の策定を進めているが、第1次から終始一貫して科研費の獲得強化と若手研究者の育成を計画の柱に据えてきた」と説明する。

実際、助手から准教授クラスの若手教員への支援はまさに“手取り足取り”。
研究活動の推進部署であるリサーチオフィスの職員による相談対応や説明会の実施、研究計画調書のチェック、ベテラン教員による調書のブラッシュアップ、さらには科研費採択と連動した学内研究助成も用意している。

研究部は産学連携も担い、野口事務部長はその功績により、独立行政法人科学技術振興機構の「イノベーションコーディネータ賞」を受賞。「立命館モデル」と称される支援策は、いま科研費採択にも広がっている。

科研費採択データベースを使い11~15年度の立命館の新規採択種目を見ると(代表研究のみ)、総計988件のうち補助額が500万円以下である基盤研究(C)と挑戦的萌芽研究、若手研究(B)の3種目で699件(70%)を占めている。「大型種目である基盤研究(S)や(A)を申請しても採択されることは少なく、まずは地道に基盤研究(C)などの申請を推奨している」(野口事務部長)。

教員側の満足度も高い。
採択実績を伸ばしているスポーツ健康科学部で、「低酸素環境下での運動が糖代謝に及ぼす影響」が採択されている後藤一成准教授は、「自然科学の実験系では大学からの個人研究費だけでは大規模研究を行うのは難しいが、着実に科研費に採択されるための支援は、研究の推進にダイレクトにつながっている。最近では、過去に採択された調書の一部を閲覧できるようにもなり、(採択されるためのツボがわかり)高い採択率につながっていると思う」と語る。

野口事務部長は、「まだ伸びしろはある」という。
全研究者のうち未申請者がまだ4割おり、採択件数を伸ばす余地はある。ただ目標としてきた早慶には順位でこそ差を詰めているが、獲得金額の差はむしろ拡大しているからだ。

「学内における推進制度を抜本的に変えていかなければ、ここからのランクアップは容易ではない」。

どんな支援策を打ち出すか。まだまだ立命館から目が離せそうにない。

船木春仁 = 文

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