リーダーシップと、そのリーダーが持つフィットネス習慣の質は、密接に結びついている。買収交渉、メディア取材、難しい対話、あるいは予期せぬ危機であれ、フィットネスはリーダーがそれぞれの場面でどう考え、どう行動するかに影響を与える。
リーダーにとってのフィットネスは、単なる見た目を整えることを超えたものだ。ビジネスというスポーツにおいて、フィットネスとは複数の要求に応えて機能する身体を築くと同時に、リーダーシップに必要な精神的・感情的な要件を支えることを意味する。
British Journal of Sports Medicineに掲載された大規模研究では、定期的な身体活動が実行機能、処理速度、記憶力を大きく改善することが示された。これらはいずれも、リーダーが日々活用している認知資源である。
意図をもって実践されるフィットネスは、多才で、役割に伴う厳しさや要求に対応できるリーダーを育てる。以下の7つの習慣は、長期にわたる持続可能なパフォーマンスの強固な基盤を築く。
まず自分のバケツを満たす
概念としては最も簡単なことが、実行においては最も難しいとよくいわれる。多くのCEOや経営者にとって、自分を最優先にすることはまさにその類いに入る。
創業者やCEOが、自分自身のリソースを補充することなく、事業、従業員、投資家、家族に注ぎ続けるなら、それは借り物の時間で動いているに等しい。多くのビジネスリーダーにとって、痛みを押し切り、個人的な苦悩については沈黙を保つことが行動様式になっている。
そのやり方は並外れた成功につながることもあるが、その裏側では健康状態が最適とはいえない状況と同時進行している場合が多い。リーダーはむしろ、戦略的に利己的になることができる。自分自身に注げば注ぐほど、周囲の人々やあらゆる物事により多くを注げるようになるからだ。
リーダーは、取締役会の予定と同じようにワークアウトをスケジュールに組み込むことから始められる。交渉の余地がなく、守られ、計画された予定にするのだ。そうすれば、モチベーションや、緊急に見える優先事項をめぐる日々の葛藤を取り除ける。トレーナー、コーチ、食事の準備など、適切なところで委任することも、さらなる摩擦を減らす。
よりアクティブな会議を増やす
平均的な経営幹部は、仕事時間の大半を座って過ごす。立て続けの電話会議、会議室、画面に向かう時間が積み重なり、活動しない時間が着実に増えていく。
Frontiers in Public Healthに掲載されたレビューでは、NEAT(非運動性熱産生)、つまりジム以外の日常的な動きで消費されるエネルギーを少しずつ増やすことが、デスクワーク中心の労働者に長期的に意味のある健康上の利益をもたらすことが示された。また同レビューでは、座って作業する条件と比べて、歩くことによりエネルギー消費量が約2.7倍に増えた。
効果的なCEOは、ウォーキングミーティング、電話中に歩き回ること、あるいは短時間の「エクササイズ・スナック」といった休憩を挟むことで、1日の設計そのものに運動を組み込んでいる。
筋肉だけでなくエンジンをつくる
リーダーシップは持久力を要する競技である。リーダーは何年にもわたり、絶え間ないプレッシャー、移動、ストレス、公の監視にさらされる。心肺機能は、その持久力を支えるエンジンだ。有酸素能力を示す多くの指標の一つであるVO2 maxが高いほど、強いプレッシャーのかかる瞬間にリーダーの脳へより多くの酸素が届けられる。
優れた有酸素能力は、ストレスにさらされる合間の素早い回復と、多忙な1日における高い業務処理能力につながる。心肺トレーニングを優先する経営幹部は、寿命を延ばすだけでなく、リーダーとして活動する毎年のパフォーマンスを高めているのだ。
トレーニングを期分けする
ビジネスは季節ごとに動く。製品ローンチ、資金調達ラウンド、成長のスプリント、組織再編の時期、さらには比較的静かな四半期もある。トレーニングも同じリズムを反映すべきだ。
ビジネスの四半期を計画するのと同じようにフィットネスをサイクルで計画するリーダーは、同じ時間の投資からより良い長期的成果を引き出し、けがを避け、燃え尽きから遠ざかることができる。リーダーはこれをピリオダイゼーション(周期化)として取り入れられる。これは、定められたサイクルの中でトレーニング刺激を戦略的に変化させることだと考えればよい。
たとえば、出張が多く極めて忙しい四半期には、維持を目的としたトレーニング計画に切り替え、少し落ち着いてきたときには、より積極的で負荷の高いプログラムに移行できる。
見栄えのする指標の先を見る
体重計はフィットネスにおける売上高のようなものだ。物語の一部を示す数字ではあるが、実際にパフォーマンスを左右するすべてを覆い隠してしまう。
売上高だけに注目すれば、顧客維持率、利益率、その他の運営コストが見えなくなる。同様に、体重計の数字に固執すれば、リーダーの体組成、筋力、動作の質、心血管の健康が見えなくなる。どちらの数字も遅行指標であり、パフォーマンスを生み出す要因ではない。
リーダーが先行指標として利益率、獲得コスト、維持率に注目するように、CEOの健康ダッシュボードも能力と長期的な健康を反映するものにできる。検査値や安静時心拍数のような有形の指標に加え、日々の体調、とりわけ出張が多い時期にどう感じているかといった無形の指標も考えるべきだ。
アスリートのように回復に向き合う
アスリートにとっての基本ルールの一つに、「回復できる範囲でしか、ハードに鍛えることはできない」という考え方がある。トレーニングや運動はストレスと筋損傷を生むが、成長と適応は、リーダーに修復のための時間とリソースがあるときにのみ起こる。
ビジネスリーダーはボールを蹴っているわけではないが、ビジネスというゲームに参加している。
適切な回復がなければ、疲弊した神経系で活動することになり、反応時間、感情のコントロール、意思決定の質が低下する。例えば、睡眠などを通じた質の高い回復は、単に良い決断を下すか、それとも企業の軌道を変えるような素晴らしい決断を下すかの分かれ目となることが多い。
意図的に自分を追い込む
何百マイルものサイクリング、ウルトラマラソン、その他の過酷な身体的挑戦において最も価値があるのは、長く残る精神面への影響である。
The Southern Business and Economic Journalに掲載された研究では、長期的な運動がレジリエンスに有意なプラスの効果をもたらすことがわかった。さらに印象的だったのは、運動していなかった人々に起きたことだ。研究期間中、彼らのレジリエンスのスコアは実際に低下していた。
困難な身体的目標は、規律、感情の制御、不快感に直面したときの粘り強さを強化する。これらはいずれも役員会議室に転用でき、組織文化全体にも波及する。
適切なフィットネス習慣が、適応力のあるリーダーをつくる
現代のビジネスとリーダーシップの環境は、ますますハイパフォーマンススポーツに似てきている。どちらにも、持続的なパフォーマンス、継続的な適応、そして最も重要な局面で成果を出す能力が求められる。
これら7つの中核的なフィットネス習慣をリーダーシップ開発の不可欠な一部として扱うことで、リーダーはプレッシャーをただ生き延びるだけでなく、周囲の人々のペースをつくるために必要な、重要な身体的・精神的土台を築くことができる。より強い身体をつくっても、すべてのビジネス課題が解決するわけではない。しかし、それらに向き合うための、よりレジリエントな基盤を提供してくれる。



