関根:ある企業が「20代の女性に届けたい」と言って小杉湯原宿に置いていたシャンプーを、50代の男性が最初に買って行ったということがありました。家に帰ったら初めて娘さんに「いいにおい」と言われた、その嬉しさで購入されたと言うんです。
ターゲティングした瞬間に、本来届くはずだった人への扉を閉めてしまうことがあります。小杉湯原宿に置くものは、「年齢を問わず、誰にでも一度受け入れてもらえると信じてやってみましょう」と伝えていて、そこからブランド側にも思いもよらない気づきが生まれています。
川邊:これは関根さんが言い続ける必要がありそうですよね。僕たちも井上社長に「好かれなくていいから嫌われるな」と言われていたけど、言われている側は正直盛り上がらない。盛り上がらないなと思いながらも、社長がそう言うならやるか、となる。言わなくなった瞬間に崩れますし、しつこく言い続ける人がいるから貫かれるのだと思います。
パートナー企業との「三方よし」
川邊:主な収益源は550円の入浴料と企業協賛かと思いますが、収支は成り立っていますか。
関根:550円の入浴料だけでは収益に限界があるので、パートナー企業とのプロモーション契約で支えているかたちです。ぎりぎりですが、黒字は見えています。
現在は花王、パナソニック、サッポロビールにパートナーとして入っていただいていて、小杉湯原宿でしかできないプロモーションを企画からデザインまで一貫して手がけています。浴室に花王のアメニティを置いたり、先にお話ししたように脱衣所にパナソニックのドライヤーや美顔器を設置したり。双方にとって意味のあるかたちで、場を整えています。
川邊:「体験の場」としては強いですよね。濡れた髪でドライヤーを試す機会も、すっぴんの状態で美顔器を使う機会も、ふつうは外では得られない。
関根:企業にとっては自社の製品を最も自然な状態で体験してもらえる場ですし、お客さまにとっては550円で自宅のお風呂よりも少し贅沢な時間を過ごせる。「三方よしの取り組み」になっていると思います。契約はすべて年間単位に限っていて、短期で入れ替わるのではなく、お客さまがいつ来ても同じ製品があるという安定感を大切にしています。


