川邊:もともと銭湯があった場所ではないのですね。
関根:はい。原宿では約20年前を最後に銭湯がすべてなくなっていました。小杉湯原宿は認可も本店とはまったく異なります。当初は一般公衆浴場の認可取得を検討しましたが、公衆浴場法が長年、改正されておらず、災害時の安全確保のために自然光の採り入れが必須です。しかし、地下1階にある小杉湯原宿ではそれを満たせません。こうした事情から「その他公衆浴場」──スーパー銭湯やサウナ施設と同じ区分の認可で運営しています。
川邊:新しく一般公衆浴場の認可を取ることは難しいことなんですね。
関根:そうなんです。ただ、入浴料は一般の銭湯と同じ550円にしています。
川邊:それはあえてそうしているのですか。
関根:はい。開業当初、原宿に銭湯ができると聞いて、形だけのスパか、インバウンド向けの大型施設を想像された方が多かったんです。お客さまは最初に必ず料金を尋ねられるのですが、「550円です」とお答えすると「本当に銭湯なんですね」という反応が返ってきます。
今の時代、コンセプトや企画書のうえでは銭湯のようなものをつくることはできますが、実態として“街の銭湯”と呼べるものをつくるのは別の話です。もしこの金額が1200円であれば、どれだけ理念を掲げてもスパと見なされていたと思います。550円という価格そのものが、ここが本当に銭湯であることの第一歩になっています。
赤ちゃんからおじいちゃんまで来る理由
川邊:実際にはどんな方が来ているのですか。近隣に住んでいる方が中心なのか、通勤途中に寄る方なのか、それともインバウンドの観光客なのか。
関根:本当にあらゆる方が来てくださっています。原宿という土地柄、近隣の定住者は他の地域と比べると少ないのですが、それでも1〜2割は近所の方です。勤務先と自宅の間に明治神宮前駅がある方が、副都心線や千代田線の帰りに寄ってくださるんです。
時間帯によっては、お客さまの半数以上を常連さんが占めることもあります。すっぴんのまま、濡れた髪のまま帰る方もいらっしゃって、常連さんの割合は5割、多いと6割ほどになります。
川邊:それは面白い。
関根:日中や土日は、あえて足を運んでくださる初めての方も増えます。なかには推し活のために早朝のバスでバスタ新宿に5時、6時に着いて、そのまま朝7時に小杉湯原宿でお風呂に入り、脱衣所に設置されているパナソニックのヘアアイロンで髪を巻いてからライブ会場に向かうという方もいらっしゃいます。
かと思えば、中学生がスケボーを抱えて4人組で来て、お風呂のあとに外のスペースでみんなで宿題をやって帰る。その隣では、おじいちゃんが生ビールを飲んでいるといった光景も見られます。本当に多種多様です。


