生成AIをはじめとするデジタル技術が急速に普及し、あらゆる情報が瞬時に手に入る現代において、BtoBマーケティングの現場では「展示会は時代遅れではないか」という声が聞かれるようになった。しかし、実際のデータに目を向けると、国内の展示会開催件数はコロナ前を超える水準まで回復し、増加傾向にある。情報が溢れかえる時代だからこそ、実際に製品に触れ、直接対話ができるリアルの場への期待はむしろ高まっているのが現状だ。こうした中、国内展示会の現状と課題を包括的に分析した「展示会白書」が発行された。
それによると、展示会当日に出展企業が最も注力している事項について、「多くの来場者に積極的に声をかけること」や「ブースの見栄えや演出で目を引くこと」、「名刺やリード情報を多く獲得すること」といった、不特定多数との接触を増やす「量」の活動が上位に並んだ。これに対して、来場者が「期待以上」だと感じたブースの特徴として挙げたのは、「開発者やエンジニアから直接話を聞けた」「他社では聞けない導入事例や活用ノウハウに触れられた」といった、いずれも「質」に関わる体験である。


来場者がブースに立ち寄る際に重視するのも、見た目の華やかさではなく、自社の業務課題に直結するキーワードや展示内容だ。出展者が力を注ぐ「声かけや演出」と、来場者が求める「深い対話や個別提案」との間には、ギャップが存在していることがわかる。
この認識のずれは、展示会そのものの成果やその後のフォローアップにも影を落とす。展示会後に不満を感じた来場者のうち、半数以上が「ブースで話した内容と無関係な営業をされた」と回答し、「名刺交換をしただけなのに強引な売り込みをされた」という不満が次に多かった。出展者にとって主要な成果指標である名刺交換やリード獲得は、来場者にとって必ずしも「商談への同意」を意味しない。実際に、来場者の7割以上が展示会後のフォローアップに不満やストレスを感じた経験を持つ一方で、出展者側で「フォローアップ体制の不十分さ」を課題として認識している企業は約3割にとどまる。来場者が抱くストレスの大きさに対し、出展企業側の危機意識が追いついていない非対称な実態が浮き彫りとなった。




