人工知能(AI)が巨大なビジネスであることは間違いない。
ガートナーの最近の推計によると、今年の世界のAI支出は総額2兆5900億ドル(約421兆円)に達し、前年比47%の増加が見込まれる。その多くはベンダーやハイパースケーラーによるものだが、企業もAI予算を拡大しつつある。ガートナーは、AI支出が来年までに35%増加し、驚異的な3兆5000億ドル(約569兆円)に達すると見込んでいる。
そこで問われるのは、AIが少なくとも3兆ドル(約487兆円)の価値を生み出しているのか、あるいは近く生み出すのかという点だ。少なくとも現時点では、こうしたAI投資は期待に応えていない。ベイン・アンド・カンパニーが951社を対象に実施した最近の調査がそう示唆している。
同コンサルティング会社の調査によると、AIによるコスト削減を測定した企業の約40%は、当初11〜20%以上の効果を目標としていたにもかかわらず、削減率が10%未満にとどまった。それでも90%の企業は、今度は「より大きな自律性、複雑性、影響力をもって稼働する」エージェントの構築と導入に向け、再び予算を増やしている。
取締役会が自動化予算を拡大する光景は、毎年の恒例行事である。ベインのマイケル・ヘリック、プルナ・ドッダパネニ、アントワーヌ・デバールの3氏はそう指摘する。「毎年、CEOは次の波に承認を与える。ロボティック・プロセス・オートメーション、次に機械学習、次に生成AI、そして今はエージェントだ。そして毎年、削減効果は期待を下回る」
この未達は、警鐘を鳴らすほどではないと3氏は付け加える。その差は「プログラムを中止させるほどではないが、継続的に、静かに、そして経営幹部が不安を覚えるべき幅で」生じている。
とはいえ、AIなのだから問題ないのだろうか。「技術は機能した。しかし価値は届かなかった」と3氏は書いている。
何が問題なのか。ヘリック氏らは、AIの価値実現を阻む障壁として次の点を挙げている。
- AI自動化は自律的ではない。人間の労働力はなお必要だ。 「現在、本番環境で完全自律型エージェントを稼働させている企業はわずか7%にすぎない」
- 企業は自動化に循環的な賭けをしている。「生成AIとエージェント型AIへの投資をどのように賄う計画かを尋ねたところ、企業の44%と最大の割合が、過去の自動化プログラムによる削減分を挙げた。過去のリターンで次の波を自己資金化することは、規律ある行動のように聞こえる。だが実際には、構造的な漏れを抱えた循環的な賭けである。前回の波は期待を下回った。削減原資は想定より小さい」
- データは依然として壁であり、崩れる気配がない。研究者らは「データ近代化に多額の投資が行われているにもかかわらず、データへのアクセスと統合はAIの進展に対する最大の障壁であり続けている」としている。回答者の41%が挙げた、AI進展に対する単一最大の障壁である。
ベインのチームは、AIの投資対効果で先行するために、次の提言を示している。
- 既存の非効率な道筋をAIで舗装してはならない。「AIプログラムを承認する前に問うべきなのは、『どこにAIを適用できるか』ではなく、『もし今日このプロセスをゼロから設計するなら、どのような形になるか』である」
- 過去のテクノロジー投資のROIを見る。「CFOは、過去の自動化プログラムについて、予測リターンではなく実際のリターンを監査すべきだ。前回のプログラムが目標削減額の60%しか達成しなかったのであれば、今回の投資規模もそれに応じて設定する必要がある」
- 責任者を置く。 ベインの共著者らは、ガバナンスは「IT部門、事業部門、中央組織の間でほぼ均等に分かれがちで、ほとんどの組織で明確なオーナーがいない」と指摘する。「本番システムでエージェントが重大な誤りを犯したとき、その場しのぎで説明責任を組み立てることはできない。事前に確立しておく必要がある」
- データ問題の解決にAIそのものを使う。「人間が現在、手作業でデータを集め、スプレッドシートを統合し、レポートを作成している、反復可能で価値の高いワークフローを1つ自動化し、その一連の流れ全体をAIに置き換える」
- 従業員の役割を再設計する。「エージェント主導のオペレーティングモデルでは、従業員はもはやプロセスに沿って作業を進める存在ではない。エージェントにはできない高度な判断を下し、調整し、監督する存在になる。そのためには、役割の再設計、新しい働き方、チェンジマネジメントへの意図的な投資が必要だ」
- 成果はプログラム単位ではなく、企業全体のレベルで測定する。「企業にとって重要なのは、AI投資がより良い意思決定、より迅速な対応、より強い顧客成果を生み出しているかどうかである」



