多くの時計コレクターにとって、重要なのはそのプロセスである。理想の一本を見つけ、憧れのモデルを追い求め、ウェイティングリストに登録し、その間、志を同じくする時計愛好家たちの楽しいコミュニティでそのプロセス全体について語り合うことだ。一方で、あまり議論されず、お世辞にも楽しいとは言えないのが、時計を手に入れた後の維持コストである。価値ある時計には、専用の保険、定期的なオーバーホールやメンテナンス、修理、安全な保管場所や旅行時の配慮が必要であり、その価値に影響を与える市場の動向を常に把握しておく必要があることは言うまでもない。
適切な保険への加入は基本中の基本であり、それには定期的な査定の更新も含まれる。なぜなら、小売価格、金相場、人気の変化などが重なり、価値が変動する可能性があるからだ。金相場の上昇だけでも、この1年で多くの時計の資産価値が押し上げられており、一部のコレクションでは保険の補償額が不足している状態にある。「従来の保険における最大の補償ギャップは、ほぼ常に、購入時の支払額と現在のコレクションの実際の価値との間に生じます」と、チャブ保険と提携して高級時計専用の保険プログラムを提供するヨーロピアン・ウォッチ・カンパニー(European Watch Company)のCEO、ジョシュア・ガンジェイ氏は語る。「保険契約を更新しない期間が長くなるほど、状況は悪化します」とガンジェイ氏は警告する。「保険金額が不足していると、その時計の買い替え費用を賄えず、痛い目を見ることになります。例えば、5年前にロレックスを小売価格で保険にかけたとしても、その金額はすでに時代遅れです。小売価格で保険をかけても、買い替えの役には立ちません。ペプシGMTは(今年初めに)生産終了となる前の小売価格が11,800ドル(約192万円)でした。今、二次流通市場でその価格で見つけるのは極めて困難でしょう」
メンテナンスも、資産保護における重要な要素である。「一般的に、時計はムーブメントの種類に応じて3〜5年ごとにオーバーホールを受ける必要があります」と、手軽に時計のメンテナンス、修理、外装仕上げを依頼できる米国の高級時計修理プラットフォーム、ウォッチチェック(WatchCheck)の共同創設者であるリンデン・ラザラス氏は言う。ウォッチチェックは、顧客に時計回収用の発送キットを送り、無料で見積もりを作成し、メーカー純正の部品を使用し、進捗状況をオーナーに随時報告する。すべての作業には2年間の保証が付く。修理完了後、ウォッチチェックは保険料を全額負担して顧客に時計を返送する。「メンテナンスを怠ると、部品の早期摩耗につながり、結果的に将来、より大規模(かつ高額)な修理が必要になります」と語るラザラス氏によれば、高級機械式時計のコンプリートオーバーホールにかかる費用は平均して800〜900ドル(約14万円)程度だという。また、定期的なメンテナンスは再販価値にも影響する。「常に話題に上るのが、メンテナンス履歴です」とラザラス氏は指摘する。「購入を決める前に履歴を確認する買い手がますます増えています。適切に記録されたメンテナンス履歴があれば、いざ売却するというときに、より高い価値で買い取ってもらうことができます」
同社は、オハイオ州デイトンを拠点とし、カルティエやジャガー・ルクルトをはじめとする一流時計ブランドの公式サービスセンターとして提携している時計修理会社、ストール&コー(Stoll & Co.)と協業している。また、サザビーズ、マテリアル・グッド(Material Good)、ラグジュアリー・バザール(Luxury Bazaar)といった企業とも提携している。「正規販売店を経由してスイスに時計を送るのも確かに一つの方法ですが、多くのコレクターにとって、納期、透明性、管理のしやすさという点で物足りなさを感じることがあります」とラザラス氏は言う。「独立系の修理工房は国内外に存在しますが、多くはアクセスしにくく不便であるか、最悪の場合、信頼性に欠けるのが実情です」
盗難や詐欺に関連して、ガンジェイ氏は徹底した防犯対策を勧めている。「窃盗犯は巧妙化しており、自宅でも旅行先でもコレクターを狙っています」と彼は言う。「金庫があれば安心だと思っている人が多いですが、多くの金庫は想像しているほど安全ではありません。家庭用防犯アラームを設置し、デジタルフットプリントに気を配るだけでも、コレクションを守る上で大きな効果があります」



