最初に登場したのは、自身の外見を最大限に高めようとする「ルックスマキシング(外見の最大化)」だった。次いで、質の高い睡眠を追求する「スリープマキシング(睡眠の最大化)」が現れた。そして間もなく、説明不要の「マネーマキシング(富の最大化)」も登場した。
そして今、新たに提唱したいのが「エシックスマキシング(倫理の最大化)」という概念だ。
ここでは、この概念が意味するものとそうでないものを整理し、よくある倫理的課題にこの概念を当てはめて考えてみる。最後には、読者が倫理を「最大化」できるよう、実践に向けた行動喚起(コール・トゥ・アクション)を提示する。
エシックスマキシングとは何か
エシックスマキシングとは、あらゆる意思決定において倫理を最優先することを意味する。
公認会計士(CPA)なら誰もが、義務づけられている倫理研修を通じて、倫理が業務における「あれば望ましい」といった程度の生ぬるいものではないことを知っている。それは各州の委員会規則、専門的基準、連邦規則、そして法律に組み込まれているのだ。これらの義務に違反した会計士は、罰金や制裁、ライセンスの停止または取り消し、実務資格の喪失に直面する可能性があり、犯罪行為に及んだ場合には禁錮刑に処されることさえある。
もちろん、倫理や倫理的意思決定を重視すべきなのは、金融の専門家だけではない。どのような職種であれ、倫理原則を優先すれば、周囲から信頼され、仕事を任され、「この人こそ味方につけるべき相手だ」と口コミで紹介してもらえる可能性が高まる。
エシックスマキシングではないもの
エシックスマキシングの実践に、聖人君子である必要はない。並外れた勇気や忍耐、あるいは優れた人格を持つリーダーに不可欠とされるその他の性質すらも不要だ。ハードルをそこまで高く設定するのはスーパーヒーロー映画には向いているかもしれないが、そうした作品では、危険度が低ければ観客の興味も引けないからだ。
マーベルやDCコミックスの主人公だけが難局を乗り切る力を持っているという考えは、一体どこから来たのだろうか。倫理的な生き方とは、特殊能力の有無にかかわらず、誰もが真剣に捉えることができ、またそうすべきものなのだ。
実践例:インフルエンザの憂鬱
次のようなシナリオを想像してみてほしい。ラージは朝、インフルエンザによる高熱を出して目を覚ました。新型コロナウイルスの検査結果は陰性だった。「今日は職場で自分がどうしても必要だ」と彼は思う。重い体に鞭打ってオフィスに向かうべきか悩むラージ。「せめてZoom会議にだけでも参加して、チームと仕事を進めるべきだろうか。どうすればいいのか?」
ラージが抱いているこの疑問は、倫理的な問題だ。したがって、その答えは「エシカル・インテリジェンス(倫理的知性)」の原則に基づいている必要がある。
1. 害を与えないこと(Do No Harm)
2. 状況を改善すること(Make Things Better)
3. 他者を尊重すること(真実を語り、守秘義務を果たし、約束を守る)(Respect Others)
4. 公平であること(Be Fair)
5. 思いやりを持つこと(Care)
彼の選択肢は以下の通りだ。
A. 出社する
B. 自宅にとどまり、Zoomで会議に参加する
C. 自宅で休養する
もしラージが出社した場合、明らかに違反する恐れがあるのはどの倫理原則だろうか。それは最初の「害を与えないこと」だ。そもそも、ラージはどうやってインフルエンザに感染したのか。天罰だろうか? おそらく違う。コーヒーショップのバリスタ、数日前のカクテルパーティーで握手をした同僚、あるいは世の中でインフルエンザにかかっていた誰かからうつされた可能性が高い。
ラージが出社すれば、感染の連鎖を継続させてしまうことになる。風邪とは異なり、インフルエンザは死に至る結果をもたらすこともあるのだ。
では、自宅にとどまり、Zoomを通じてチームの会議に参加するのはどうだろうか。一見すると、これが双方にとって最善の策であるように思える。ラージは他人にインフルエンザをうつすリスクを避けつつ、給与に見合う仕事をするという約束も守れるからだ。
しかし、ラージは熱があり、頭がぼーっとしていて、疲弊しきっている。これでは本来のパフォーマンスを発揮できるはずがない。その状態でZoom会議に参加すれば、同僚の時間を無駄にし、誤った判断を下し、自らの回復を遅らせることになるだろう。これは、同僚に対する「公平さ」の原則と、自分自身に対する「思いやり」の原則に反することになる。
ラージが真の「エシックスマクサー」になるためには、自宅で静養すべきだ。私たちは職場で自分が不可欠だと思いたがるものだが、大半の状況において、そうではないことの方が多い。ラージが回復するまで自宅にいれば、他者と自分自身の双方に対する倫理的責任を果たすことになり、そして世界がそれによって止まることもない。
行動喚起(コール・トゥ・アクション)
エシックスマキシングをビジネスと人生の中心に据えるための方法を紹介する。
1. 組織に倫理規定があるか確認する
このテーマについて数十年にわたり教えてきたが、いまだに多くの企業が倫理規定(コード・オブ・エシックス)や行動指針(バリュー・ステートメント)を定めていないことに驚かされる。これらの重要な文書の一方、または両方を有していても、それにふさわしい重要性を与えていない企業が多すぎる。例えば、自社ウェブサイトのホームページ上部に「バリュー」というタブを設けるといった、極めて基本的な方法でその重要性を示すことができる。倫理規定や行動指針は、単なる言葉の羅列にすぎないかもしれないが、仕事において最も重要な言葉の1つなのだ。
2. 困難な状況に対処する際、倫理規定や行動指針をどのように活用すべきか、チームで定期的に話し合う
キーワードは「定期的に」だ。例えば銀行業界に身を置いている人なら、マネーロンダリング防止(AML)の取り組みについて年間を通じて学んでいる。AMLは「一度やれば終わり」ではない。倫理研修も同様であるべきだ。
3. 取り組むべき倫理原則を「1つ」選び、今年はその原則に集中する
実行できる以上の約束をしてしまいがちな人や、必要な場面で真実を伝えるのが苦手な人もいるかもしれない。克服すべき課題が何であれ、これからの数カ月間はその改善を最優先課題にしよう。
ルックス、睡眠、あるいは富を「最大化」したいという欲求は、誰も責めることはできない(程度の問題はあるにせよ)。ならば、そこに「エシックスマキシング」も加えてみてはいかがだろうか。これこそが、仕事と私生活の双方で成功を収めるための唯一無二の戦略である。
謝辞
2日前、私はLinkedInで「〜maxxing(最大化)」で終わる新しい造語の使用を一時停止することを提案した。こうしたかばん語は最初は巧妙だったが、使い古されてしまったと感じたからだ。すると、デボラ・カニア(BFA、MBA)から「でも、『エシックスマキシング(倫理の最大化)』ならどうでしょう? それなら大賛成です」という書き込みがあった。何と素晴らしいアイデアだろう。それが、このコラムを執筆したきっかけだ。デボラ、ありがとう。
なお、エシカル・インテリジェンスの原則は、トム・L・ビーチャムとジェームズ・F・チルドレスの著書『生命医学倫理(Principles of Biomedical Ethics)』第9版(ニューヨーク、オックスフォード大学出版局、2026年刊)を応用したものである。



