仕事がアイデンティティになるとき
職業アイデンティティは人に自信や方向性、そして達成感を与えてくれることが多い。だがあまりにも狭く自分を定義してしまうとそれが足かせにもなり得る。
私は長年、好奇心について研究してきた。その中で思い込みこそが成長を妨げる最大の障壁の1つであることに気づいた。その思い込みの1つが「自分のアイデンティティは名刺に書かれた肩書きによって決まる」という考え方だ。こうした考え方をすると、あらゆる技術革新が脅威に感じられるようになる。単に仕事を効率化する変化ではなく、自身のアイデンティティを脅かすもののように思えてしまうからだ。
一方、好奇心のある人は変化への向き合い方が異なる。自分の思い込みに疑問を投げかけ、馴染みのないスキルを学び、新たな機会が出現するたびに自分を再定義することをいとわない。「すでに持っているアイデンティティをどう守ればよいか」ではなく、「私は他にどんな人間になれるだろうか」と問う。これは現状維持ではなく成長に焦点を当てているため、はるかに力を与えてくれる問いだ。
好奇心がこれまで以上に重要な理由
AIに関する最大の誤解の1つは、自分の将来が主に最新の技術を学ぶことで決まるという考え方だ。AIツールを学ぶことは確かに重要だが、技術の変化はあまりに速く、ソフトウェアの知識だけでは長期的な競争優位性にはならない。
好奇心はより良い問いを立て、思い込みを疑い、未知のアイデアを探求し、他の人が見落としている概念を結び付けるよう促す。そうした行動は判断力や創造性、適応力、そしてイノベーションを起こす力を向上させる。これらはAIが支援できる資質だが、最終的には人間の思考に依存するものだ。
私はよく「AIはどんな仕事を奪うのか」という質問を受ける。だが、もっと有益な問いは「職業が変化していく中でも成長し続けるのはどんな人なのか」ではないだろうか。全ての大きな変革は学び続ける意欲を持ち続ける人に新たな機会をもたらす。好奇心があれば他の人が「もう十分知っている」と決めつけてしまった後もずっと学び続けることができる。
好奇心には恐れから注意を逸らして可能性へと向かわせるという利点もある。すでに持っているものを守ることに過度に意識が向くと、人は自然と変化に対して抵抗感を抱くようになる。好奇心を持つと、脅威を監視するだけでなく新たな可能性を探すようになる。こうした視点の変化は身に付けるスキルから築く人間関係、そして追求するアイデアに至るまで、日々の意思決定に影響を及ぼす。


