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気候・環境

2026.07.09 08:10

気候変動に立ち向かうAI:先進5組織から学ぶ3つの教訓

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「ロンドンは燃え上がっている(cooking)」――今週開催された「気候アクション・ウィーク」の開幕式で、国連のアントニオ・グテーレス事務総長はそう語った。これは比喩ではなく、観測事実としての言葉だ。ロンドンは6月の最高気温記録を更新した。スペインも同様だ。欧州は燃えている。科学者らによると、これは2カ月連続で発生した記録的な熱波であり、欧州が7月を迎える前に、観測史上最高気温が塗り替えられると予想されている。世界は2024年に、気温上昇の「1.5℃」の閾値を超えた。このラインは、科学者らが長年にわたり「後戻りできない限界点(ポイント・オブ・ノー・リターン)」と呼んできたものだ。世界気象機関(WMO)は、今年の夏にエルニーニョ現象が発生する確率を80%と予測しており、状況がさらに悪化していることを示している。

しかし、今週の企業の取締役会での会話を覗いてみると、議題に上っているのは気候変動対策ではなく、人工知能(AI)である可能性のほうが高い。AIブームを考えればそれも理解できるが、地球温暖化の現実を踏まえれば、そのような贅沢はもはや許されない。スイス再保険(Swiss Re)の報告によると、2025年の自然災害による世界全体の経済損失は2200億ドル(約35兆6000億円)に達し、最悪のシナリオでは、2026年の保険損害額だけで3200億ドル(約51兆8000億円)に達する可能性があると予測されている。ストックホルム環境研究所(SEI)の最新レポートによると、気候リスクは現在、世界のサプライチェーン全体に連鎖的に波及しており、食料、エネルギー、鉱物システムを混乱させ、保険料を引き上げ、与信枠を縮小させ、従来の予測モデルでは捉えきれない形で労働生産性を損なっている。

企業が気候変動対策から目を背け、AIへと軸足を移すなか、「AIか、それとも気候変動対策か」という誤った二者択一について、立ち止まって再考する価値はある。朗報もある。研究者、非営利団体(NPO)、分野横断型のパートナーシップの数は増えており、まさにこの交差点で活動している。彼らはAIを単なる話題づくりではなく、気候危機に立ち向かう実用的なツールとして導入しているのだ。

「気候変動対策AI」分野を切り拓く人々:先導する研究者と非営利団体

気候変動対策にAIを大規模に導入できるようになる前に、誰かがその基礎作りのための地道な作業、すなわち課題の洗い出し、研究への資金提供、科学者とエンジニアの橋渡しを行わなければならない。少数の非営利団体が、まさにその役割を果たしている。

Climate Change AI(CCAI)は、間違いなくこの分野における最も重要な結合組織である。共同創設者兼会長を務めるマサチューセッツ工科大学(MIT)のプリヤ・ドンティ教授をはじめとする、機械学習の研究者や気候学者らによって2019年に設立されたCCAIは、これまでほとんど対話のなかった2つのコミュニティの架け橋として6年間活動してきた。CCAIは、気候問題に対して機械学習が有意義な変化をもたらすことができる領域を特定し、研究に資金を提供し、学界、産業界、政策立案者の垣根を越えた協力のためのインフラを構築している。ドンティ氏はAI技術を過大評価しないよう注意を払っており、気候変動対策におけるAIの可能性について、有望であると同時にリスクもあり、多くの用途においてはいまだ実証されていないと説明する。この慎重な姿勢こそが、この分野における真剣なプレイヤーと、単なるバズワードとしてのブームとを区別するものだ。

Climate TRACEも、同様に基礎的な取り組みを行っている。それは「排出量の可視化」だ。100以上の大学、科学者、AI専門家らの支援を受ける同組織は、人工衛星の画像と機械学習を利用して、世界中にある7億4500万カ所以上の排出源からの温室効果ガス排出量を独自に追跡し、そのデータを無償で公開している。

COP30において、Climate TRACEは、同組織が世界規模で追跡しているすべての主要な排出源に対し、潜在的な脱炭素化ソリューションをマッピングするツールを発表した。これにより、現状の「診断」から、具体的な「処方箋」の提示へと移行した。なお、AIを利用した排出量監視はまだ発展途上である点には留意すべきだ。一部からは、Climate TRACEの車両排出量データの正確性に疑問を呈する声も上がっており、同組織はこれに反論している。こうした検証や限界に関する透明性こそが、真剣な気候データ分析と、見せかけの環境配慮である「グリーンウォッシング」との違いを示している。

英国拠点の非営利団体OpenClimateFixは、AIが研究段階から実運用へ移行したときにどのような姿になるのかを示す、最も明快な例である。AIツールを基盤に構築された同団体のQuartz Solarは、送電網の運用者が太陽光発電の供給量と供給タイミングを予測するのを支援する。これは現在、英国のNational Energy System Operator(NESO)に組み込まれており、年間推定3800万ドル(約61億5000万円)の送電網コスト削減と、年間30万トンのCO₂削減に貢献している。2035年までには、年間削減額が1億9000万ドル(約308億円)に達すると予測されている。同じアプローチは現在、Google DeepMindとの提携によりインドの送電網にも適用されている。詳しくは次のセクションで述べる。

「気候変動対策AI」のパートナーシップがもたらす具体的成果

気候変動対策AIにおいて最も大きな影響力を持つ取り組みは、単一の組織内で行われているのではない。非営利団体、技術研究所、そして最も緊急にソリューションを必要としている産業界との「境界」から生まれているのだ。

OpenClimateFixとGoogle DeepMindの提携はその好例だ。2026年1月、両組織はDeepMindのAIモデル「WeatherNext」をインドの電力網の運用に統合することを発表した。これは、2030年までに500ギガワットの再生可能エネルギー設備を導入し、太陽光発電で国内電力の約4分の1を賄うというインドの目標を直接的に支援するものだ。核心となる課題はいたってシンプルである。再生可能エネルギーの出力は天候によって変動するため、供給を正確に予測できない送電網運用者は、コストが高く、炭素集約度の高いバックアップ発電に頼らざるを得なくなる。WeatherNextはこの課題に直接アプローチし、インドの州営送電網運用者における風力発電予測の精度をすでに最大8%向上させている。これにより、高コストな送電網の需給不均衡を抑制し、より多くのクリーンエネルギーをシステムに取り込みやすくしている。

Google Researchによる洪水予測の取り組みは、このアプローチをさらに切迫した規模へと拡張している。WMOによると、突発的な洪水は、世界における洪水関連の死者数の約85%(年間5000人以上)を占めているにもかかわらず、予測が最も困難な災害の一つだ。しかし、わずか12時間前に警告を出すだけでも、被害を60%軽減できる。2026年3月、Googleは自社のAI搭載ツール「Flood Hub」の機能を拡張し、世界150カ国の都市部における突発的洪水の予測を開始した。これには、公式データが乏しい地域において、過去の260万本のニュース報道から洪水のパターンを特定する手法が用いられている。すでに具体的な成果も出ている。南部アフリカでは、地域の災害対策当局がベータテスト中にFlood Hubの警告をキャッチし、現地の状況を確認して、洪水のピークが来る前に対応チームを派遣することに成功した。

ボストン コンサルティング グループ(BCG)のテクノロジー開発・デザイン部門である「BCG X」は、また別のアプローチでありながら、同様に重要な参入点を示している。それは、これらの取り組みをいかに企業規模(エンタープライズスケール)へと拡大するかだ。BCG Xのマネージング・ディレクター兼パートナーであるデビッド・ポテール氏は、AIと衛星データの組み合わせが、歴史的に監視が困難であった部門における気候変動への説明責任(アカウンタビリティ)のあり方を根本から変えつつあると公に指摘している。人工衛星データを活用したAIシステムは、エネルギー関連のメタン排出量が、各国が国連に公式報告している数値よりも80%多いことを明らかにした。特に米国においては、環境保護庁(EPA)の推定値の4倍に上る。これは単なる端数の切り捨てや誤差ではない。企業の気候リスク、規制対応、サプライチェーンの説明責任に直接影響を及ぼす構造的な盲点なのだ。Googleと提携して作成されたBCGの分析によると、AIを活用することで、2030年までに世界の温室効果ガス排出量の5〜10%を削減できる可能性があると推計されている。これは欧州連合(EU)の年間総排出量に匹敵する規模だ。

ビジネスにおける「気候変動対策AI」:3つの重要ポイント

ここで紹介した組織には、プレスリリースには載らない共通点がある。彼らは、分野の枠組みを決めるような先駆的な研究を行い、ツールを国規模で配備し、政府の報告漏れがある排出量を追跡し、気候科学と企業の意思決定との間のギャップを埋めている。そして極めて重要なことに、これらを単独で行っている組織は一つもない。本稿で紹介した意義ある成果はすべて、セクター、分野、地域の枠を超えたコラボレーションから生まれたものだ。これこそが成功モデルであり、ビジネスリーダーには以下の3つの示唆を与える。

第1に、企業が関与しているかどうかにかかわらず、説明責任を果たすためのインフラ構築は進んでいる。Climate TRACEは、7億4500万カ所の排出源からの排出量を独自に追跡している。人工衛星システムは、公式報告をはるかに上回るメタン排出レベルを明らかにしている。「Flood Hub」は、150カ国におよぶ物理的リスクをマッピングしている。今後、規制、投資家による監視、保険料設定の基盤となる「データ層」はすでに構築されつつある。問題は、それがビジネスに影響を与えるかどうかではない。影響が及ぶ前に、自社のリスク(エクスポージャー)を把握できているかどうかだ。

第2に、最も持続可能な気候変動対策AIのソリューションは、単一の組織からではなくパートナーシップから生まれている。OpenClimateFixは、インドでの展開を単独で築いたわけではない。Google Researchの洪水予測は、政府によるデータ共有と人道支援対応ネットワークに依存している。BCG Xの衛星関連の取り組みには、データが明らかにする内容に基づいて行動する意思のある顧客が必要だ。パートナー、顧客、あるいは資金提供者として、こうしたエコシステムに早期に関与するビジネスリーダーは、完成品を待つリーダーより優位に立つだろう。

第3に、AIは気候変動戦略の「代わり」にはならない。戦略を「加速させるもの(アクセラレーター)」なのだ。本稿で紹介した組織は、再生可能エネルギーの予測、排出量の追跡、洪水発生前の地域社会への警告など、特定のタスクをより迅速かつ高精度に実行するためにAIを活用している。その具体性こそが核心だ。最も大きな恩恵を受けるリーダーは、漠然とAIを追い求める人々ではなく、自社の事業、サプライチェーン、あるいは市場において、AIが気候変動に関する現実の課題をどこで解決できるかを明確に特定できる人々である。

静かな革命はすでに始まっている。問題は、あなたがそこに目を向けているかどうかだ。

forbes.com 原文

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