【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

サイエンス

2026.07.09 18:00

なぜ生物の「進化が起きる瞬間」を目にすることができないのか?

stock.adobe.com

また、世界各地の都市部で見られる、チカイエカと呼ばれる蚊の集団は、下水道や地下鉄のトンネルで発生して冬でも活動し、本来の標的である鳥ではなく、ヒトから吸血する。チカイエカはしばらく前から、都市における急速な進化の典型例とされてきた。 

advertisement

ところが、2025年に『サイエンス』に掲載された論文で、この説は覆された。チカイエカの起源は1000年以上も昔にさかのぼり、おそらく地中海の初期農村社会に端を発することが判明したのだ。チカイエカは、地下鉄の賜物ではなく、単に地下鉄に新居を構えただけだった。

とはいえ、これもまた驚くべき進化のストーリーの一つであることに変わりはない。都市は、いわば進化の圧力鍋だ。その生息環境は目新しく、食料源は人為的で、気温は高く、捕食者の顔ぶれも異なる。結果として、都市における選択圧は極端に強く、都市における進化的変化は、都市適応を研究する生物学者ですら驚くほど急速に進む。

都市適応の例からよくわかるように、選択圧が強く、1世代の期間が短ければ、進化を目撃することは可能だ。アノールやメキシコマシコは例外ではなく、むしろ進化の法則を、目に見える形で体現する存在と言える。

advertisement

進化の「視認しきい値」

進化が不可視であるように思える、より本質的な理由は、私たちが実際に何を見ているかに関係している。進化的変化のほとんどは、一つの集団内の遺伝子頻度のレベルで起こる。すなわち、あるバージョンの遺伝子の希少性が上がったり下がったりするという、緩慢な統計的変動の形をとるのだ。

こうした変化は、十分に蓄積して測定可能な形質の変化に至らないかぎり、目に見える痕跡を一切残さない。その上、たとえ形質が変化したとしても、集団内には形質の個体差があるため、平均値がわずかながら方向性のある変化を示したところで、個体ごとのばらつきというノイズに埋もれてしまう。進化的変化を検出するには、何世代にもわたって入念に測定を続ける必要があるのだ。

私たちが気づく、たいていの人が「これぞ進化」と思うものは、ドラマチックな最終産物だ。ヒレが四肢になり、爬虫類が鳥になり、類人猿が人類になる。このような激変は、化石記録として残された、圧縮された過去の物語だ。しかし、そうした変化は何百万年という歳月と何百万世代もの時間をかけて展開されたものであり、単一のステップで観察できるほど大きな変化はどこにも存在しない。途方もなく長い時間をかけて、微細な変化を積み重ねるからこそ、進化は圧巻の成果を生み出せるのだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事