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サイエンス

2026.07.09 18:00

なぜ生物の「進化が起きる瞬間」を目にすることができないのか?

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今日生きているすべての生物種は、数十億年に及ぶ絶え間ない変化の賜物だ。進化は一度として歩みを止めることなく、地球上のすべての眼、すべての毒腺、すべての翼をつくりだしてきた。

けれども、ほとんどの人にとって生物の世界は、完全に静止して おり、変化の途上にあるものは何もないかのように見える。電線にとまる鳥たちは、1世紀前の野鳥図鑑に描かれた鳥とまったく同じ姿をしている。進化が常に起こり続けているというなら、なぜ不変に見えるのだろう?

端的に答えるなら、進化は地質学的なタイムスケールで進行し、この時計においてはヒトの寿命など、地質学的尺度から見れば一瞬の瞬きにすぎないからだ。しかし、答えを掘り下げていくと、さらに興味深い事実が明らかになる。進化の不可視性は、私たちが気長に待つことができないという、単なる忍耐の問題ではないのだ。そこには、自然選択の仕組みの構造的特徴も関わっていて、いったんこの特徴を理解すれば、進化は見かけ上のフリーズ状態を脱し、いつでもどこでも起こっているものに見えてくる。あくまでも、私たちの眼で認識できる「しきい値」に達していないだけなのだ。

進化は、「見えない時計」に従っている

進化生物学者は、変化のタイムスケールについて、年数ではなく、世代数を基準に考える。1世代が約25年であるアフリカゾウのような種の場合、1000年にわたる進化がカバーできるのは、わずかに約40世代でしかない。これほど短い期間では、有意義な変化が起こる可能性はあるとはいえ、劇的な変化はごくまれだ。

私たちヒトのような種の場合でも、1世代の長さは25~30年なので、1000年はわずか30~40世代にしかならない。そして、ヒトが1000年間で蓄積する数十という世代交代は、細菌ならば、わずか半日で達成できるレベルだ。

だからこそ細菌は、私たちの生涯のうちにはっきりと進化する生物の代表例なのだ。細菌の個体群は、1年で数千世代を重ねることさえある。リアルタイムで起こる自然選択の教科書的な事例である、抗生物質耐性が極めて急速に出現するのは、まさにこうした世代交代の速さのためであると、2022年に学術誌『Nature Reviews Microbiology』に掲載された総説論文でも解説されている。細菌の進化は、鳥や哺乳類で起こっている進化と質的に異なるわけではない。単純に時計の進みが速いのだ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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