アップル(AAPL)の株価は米国時間6月25日、同社がMacとiPadを100〜300ドル(約1万6300〜4万8800円)値上げしたことを受け、6%下落した。値上げの理由としてアップルはメモリー不足を挙げ、ティム・クックCEOはこれを「100年に一度の洪水」と表現した。ところが、それから2週間もたたないうちに、株価は下落分の大半を取り戻し、52週高値に近い水準まで戻している。
市場は、アップルの置かれた状況を二つの点から見直しているようだ。一つは、DRAM(半導体メモリーの一種)が不足するなかで、アップルが競合他社と比べてどれほど有利な立場にあるかという点。もう一つは、AI関連の支出を慎重に抑えてきた判断が、いかに賢明だったかという点である。
DRAM不足のなかでアップルが有利な理由
DRAMの契約価格は、2026年第1四半期に約90〜95%も急騰した。TrendForceは、第2四半期にもさらに58〜63%上がると見込んでいる。値上がりの背景には、供給側の事情がある。サムスン、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーが、ウエハーの生産能力をAIサーバー向けの高帯域幅メモリーに振り向けているため、消費者向け製品に回るメモリーが足りなくなっているのだ。
その影響で、マイクロソフトのSurfaceやXboxに加え、デル・テクノロジーズ、HP、レノボといったブランドも値上げに踏み切った。こうしたなかでアップルは、増えたコストを消費者に転嫁した主要ハードウエアメーカーのなかで最も慎重に時期を見極めていた。そのため、顧客からの好感を得るとともに、価格戦略をじっくり練る時間も確保できた。
さらにアップルには、メモリー危機が起こる前から利益率が安定していたという強みがある。第2四半期の売上総利益率は約48%に達し、前年同期の46.6%から上昇した。有利な製品構成と、サービス部門の成長が寄与したためだ。加えて、アップルのエコシステムによる囲い込みも、安定を支えている。すでに他のアップル製品があり、iCloud、iMessage、AirDropを10年にわたって使ってきたMacBookやiPadの購入者なら、200ドル(約3万2500円)の値上げでもWindowsユーザーより受け入れやすいと考えられる。しかも、規模の大きさと取引先との関係のため、アップルは小規模なPCメーカーよりもうまくこの値上げ圧力に耐えられる。
しかも、アップル最大の事業で売上高のおよそ半分を稼ぐiPhoneや、Apple Watch、AirPodsは、これまでのところ値上げしていない。iPhone向けメモリーの価格もほぼ確実に上がっているはずだが、アップルはあえて次の製品刷新の時期を待っているとみられる。次の刷新は高価格帯モデルにより重点を置くと見込まれ、そこでなら値上げを正当化しやすいからだ。この戦略も、投資家に好意的に受け止められた可能性が高い。



