あらゆる企業が同じエンジニアリング人材を奪い合うなか、その競争はしばしば、最も高い給与やより魅力的な福利厚生を提示する戦いになりがちだ。しかし、勝利を収める企業が必ずしも最大の予算を持つ企業とは限らない。そうした企業が用意しているのは、エンジニアリングのプロフェッショナルが挑むに足る、最も魅力的な課題を解決する役割なのだ。
マッキンゼーによるテック人材に関する調査によると、テック分野で働く人の3分の1以上が、転職や現職にとどまるかを決める際の重要な要素として、報酬と同等に「有意義な仕事」を挙げている。さらに、どちらの場合でもキャリア開発の機会が報酬を上回っており、これは往々にして、彼らが解決したいと思う魅力的かつ長期的な課題と結びついている。
ただし、興味深い問題を提示すればよいという話ではない。本物の問題を解く機会を与えることが重要なのである。この2つには違いがあり、トップクラスの人材はそれを即座に見抜く。
「面白い」だけでは不十分
面白そうに見えて実態の伴わない課題を、つい仕立て上げたくなるかもしれない。例えば、社内ツールの開発を行う職務を「データとデザインの交差点で働き、顧客体験の成果を高めるAI搭載プラットフォームを構築・提供する」と表現するようなケースだ。響きは面白いが、大局的な視点とのつながりが見えない。専門用語に満ちた求人票を書くのではなく、具体的な成果を記載することで、候補者がその職務の重要性を明確に理解できるようにすべきだ。
影響力のあるキャリアを築こうとするエンジニアは、単に刺激的なパズルを解く以上のものを求めている。彼らが解決したいのは、失敗すれば実害が生じ、成功すれば永続的な影響をもたらすような課題だ。KLAの「エンジニアリング・インスピレーション・レポート」によると、エンジニアや工学系の学生の65%が、「人々の生活を変える可能性のある何かを生み出したい」という理由でこのキャリアを選んだという。
例えば、メイ・モビリティ(May Mobility)の多くのエンジニアは、自身の影響力を実感した共通の転機として、自分たちが書いたコードで動く車両に実際に乗り、乗客が安全かつ時間通りに目的地へ到着する様子を目の当たりにした瞬間を挙げる。そのため、私たちはその瞬間を意図的に創り出している。定期的にチームのメンバーを当社の自動運転車(AV)に乗せ、さらにはその機会を家族にも開放している。また、顧客や乗客を招いて、良かった点も悪かった点も含めた体験談を共有してもらっている。そのフィードバックこそが、語るに値するモビリティサービスを構築する上で不可欠だからだ。
影響をもたらす挑戦を突きつけられても、優秀なエンジニアは気後れしない。むしろ引き寄せられ、モチベーションを維持し、切磋琢磨する文化が育まれる。もしあなたの組織がそのような機会を提供できていないなら、提供するためには何が必要だろうか。それを定義し伝えることこそが、単なる「求人」を、その会社に「入社する理由」へと変えるのだ。
売り込みより証拠
真剣に就職活動を行っている応募者のほとんどは、事前に調査を行う。実際に、「求職者の53%は求人票を読んだ後に企業の詳細情報を検索する」とし、さらに「求職者の実に83%が、応募先を決める際に企業の口コミや評価を調べる傾向がある」という。彼らは求人票やブログ、プレスリリースを読み、LinkedInで社員に連絡を取るなどしている。最初の面接の前に、彼らはすでにあなたの会社が何を重視し、自分たちにどのような機会が用意されているか、かなり明確なイメージを持っているのだ。だからこそ、受け入れ体制を万全に整えておく必要がある。これまでの実績で惹きつけ、その上で彼らがどのように会社に貢献できるかを話す準備をしておこう。
優秀な人材を惹きつけ続ける企業は、実際に自社が構築し、世に送り出し、運用してきた実績を示すことができる企業だ。自社がまだ売上を得ていない段階、あるいは製品開発前の段階であっても、現在地、向かう先、そしてそこに到達するために必要なことを透明性を持って伝えるべきだ。直面する真の課題とともに、正しい期待値を設定することは、候補者を内定へと導く原動力になる。
採用メッセージを設計する
採用過程での対話は、候補者がその職務をどのように捉えるかに直結するため、一貫したコミュニケーションが極めて重要だ。実際に、2023年の「Greenhouse 候補者面接体験レポート」によると、採用プロセスにおける3つの大きな危険信号(レッドフラッグ)は、「コミュニケーションの不足」「不快な面接体験」、そして「曖昧な職務内容」であるという。採用担当者や面接官は、採用チームが解決しようとしている最大の課題と、なぜその職務を募集しているのかを明確に説明できなければならない。
Greenhouseはまた、「候補者の36%が、不快な面接体験の後に選考を辞退した(連絡を絶った)」ことも明らかにしている。優秀な候補者の離脱を防ぐため、採用チームは面接体験全体の改善方法を定期的に話し合うべきだ。まずは、採用に関わるすべての人間が質問に答える準備を整え、短期および長期の目標を説明できるようにすることから始めるとよい。優れたエンジニアは優れたエンジニアに採用されたいと願うものであり、透明性のある対話は、候補者の技術的な卓越性が評価されていること、そしてそのチームが加わるに値する場所であることを示すシグナルとなる。
築けば、人材は集まる
優秀なエンジニアは、単に高額な給与を待っているわけではない。彼らが求めているのは、有意義な仕事であり、目に見える変化をもたらす成果の達成へと背中を押してくれる雇用主だ。したがって、採用戦略は単に欠員を埋めるだけのものであってはならない。確固たる信頼を築き、解決すべき大局的な課題を提示すること。そして、その課題を中心にチームを構築していくのだ。



