ロボットが1度見た物体について、何が、どこにあり、いつ観測され、その後どう変化したかを長期間覚えておく。MITの研究チームが開発・研究中の「DAAAM」は、ロボットが移動中に集めた物体の特徴や位置関係を3次元地図に結び付け、現実の環境についての「時空間記憶」を作る技術だ。蓄積した情報を自然言語で検索し、過去の観測を現在の行動や判断に利用できる。単に映像やデータを保存するのではなく、周囲の状況を意味のある記憶として整理し、後から呼び出せる点が核心となる。
大雑把なイメージとしては、『攻殻機動隊』シリーズのタチコマが、任務で得た情報や経験を蓄積・共有し、後の行動に生かす描写に近い。DAAAMが記録する主な対象は、物体の特徴や場所、観測した時点、時間の経過に伴う環境の変化である。現実の空間を継続的に観察し、必要な情報を後から言葉で呼び出せる「環境の長期記憶」をロボットに持たせる技術と考えると分かりやすいかもしれない。
ただこうした長期記憶は、家庭内の生活習慣、病院での患者の移動、職場での従業員の行動まで記録しかねない。誰が記憶にアクセスできるのか、何を保存し、いつ消去するのか、記録してはならない場所をどう設定するのかを定めるデータガバナンスが必要になる。アクセス権限、保存期限、記憶対象外の区域、セキュリティ、監査ログなど、ロボットの記憶を適切に管理するためのガードレールが不可欠だ。
MITが「DAAAM」を発表、稼働をまたぐ記憶をロボットに持たせる
米国時間2026年6月17日、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが「DAAAM」を発表した。これはDescribe Anything, Anywhere, at Any Moment(いつでも、どこでも、あらゆるものを記述する)の略である。名称はやや長いが、アイデアはシンプルだ。ロボットに、訪れた場所の記憶を持たせるというものである。今日、多くのロボットは目の前にあるものを認識するのが得意だ。倉庫ロボットは箱を見分けられるし、病院ロボットは廊下を進むことができ、ドローンは配管をスキャンできる。それは有用だが、ロボットはセッション間で見たものを覚えていない。これは、自分のシフトが終わるたびにすべてを忘れてしまう作業員を雇うようなものだ。
従来手法より精度が21〜53%向上
DAAAMはこの問題を解決しようとしている。ロボットが空間の詳細な地図を作成し、その地図内のオブジェクトに説明を付け、後から平易な英語の質問に答えられるようにする。赤いカートはどこにあったのか。壊れたパネルの隣には何があったのか。あのオブジェクトはいつ現れたのか。MITによると、テストでは、質問やタスクに応じて、従来手法に比べて精度が21〜53%向上したという。さらに重要なのは、ロボティクス分野で製品を構築しようとする企業にとって、ロボットの記憶が現実的な製品カテゴリーとして姿を現し始めていることだ。



