これにより、近くに座っている人物には奇妙な役割が生じることになる。正式な権限は持っていなくても、象徴的な権威を帯び始めるのだ。そのリアクションは注視され、沈黙さえも詮索される。上司との関係性が、チームの勢力図の一部となってしまう。
そのような非公式のパワーは都合が良いこともあるが、居心地の悪さの原因にもなる。本人が望んだわけでもないのに影響力を持つようになり、明らかに悪いことをしたわけでもないのに反感を買うことになる。
リーダーが意図せず「インナーサークル」を作ってしまう理由
お気に入りをあからさまに作ろうとするリーダーはほとんどいない。多くの場合、利便性によってパターンが固定化する。早く到着したからいつも同じ人が近くに座る。スケジュールが合うからいつも同じ同僚が同行する。追加の質問をするだけの自信があるから、いつも同じチームメンバーが会議後に居残る。
問題は、個々のやり取りではなく、それが「繰り返されること」だ。同じ人物が何度も非公式なアクセスを得るようになると、たとえ誰もそう呼んでいなくても、「インナーサークル(内輪のグループ)」が形成され始める。
この力学は「リーダー・メンバー交換理論(LMX理論)」で説明できる。リーダーは従業員によって異なる質の関係を築く傾向がある。一部のメンバーとは、他よりも強い信頼関係や密なコミュニケーション、大きな影響力を伴う関係になる。それは自然なことだ。しかし、その違いが目につきすぎたり、明確な理由が説明されなかったりすると、他の従業員はそれを関係性の質ではなく「えこひいき」と捉えてしまう。
リーダーは「実務に近い立場にいるから、この人とよく話すのだ」と考えるかもしれない。一方で周囲は「あの人は上司に直言できる立場にある」と考える。そして、どちらも部分的には真実なのである。
周囲が支払う隠れた代償
政治的な問題は、特定の人物がアクセスを得ることだけにとどまらない。他のメンバーが情報を出し渋るようになることだ。正式な会議の前に非公式な場で意思決定が形作られていると従業員が信じ込んでしまうと、正式な場を本当の意思決定の場として扱わなくなる恐れがある。
会議が始まる前からすでに結論は出ていると考え、上司に最も近い人物がすでに結果を左右したと思い込むかもしれない。その結果、表向きは合意したふりをして、本音は陰の会話のために取っておくようになる。
これは意思決定の質を低下させる。リーダーは反対意見を耳にしなくなり、チームはより慎重(あるいは消極的)になる。人々は仕事を改善することよりも、人間関係を読み解くことにエネルギーを費やすようになってしまう。
皮肉なことに、物理的あるいは心理的な近さは、リーダーに「自分はよく情報を把握している」という錯覚を与えつつ、実際にはその視野を狭めてしまう。近くにいる人からの声ばかりが届き、離れている人、特に地位が低い人や、自信の持てない人、非公式なアクセスの少ない人からの声は届かなくなっていく。


